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二百十一話 [救いの手] ページ11

探偵社に終わりの音が近づく。
猟犬の牙が迫る中、上空から見下ろす影が一つ。
その手には銃に装填されていない銃弾。



「…装填」



片手で銃弾を押さえ、指を添える。



「重力操作」



瞬間、銃弾にかかる重力が変わる。
軽い銃弾が、凄まじい重さの弾丸となって落下する。
それは鐵腸の右肩を的確に撃ち抜いた。



「なっ…!?」



超音速の狙撃に条野の顔色が変わる。
銃弾を使った攻撃にも関わらず、射撃音が全くなかった。
何処から、と上空を見上げるとそこには黒いヘリ。
扉を開けた青年は片手で帽子を押さえ、高らかに云った。



「莫迦やってんな探偵社!
首領の指示で拾いに来てやったぜ!」



ポートマフィア幹部、中原中也。
助けに来たのはポートマフィアのヘリだった。



「ほらよ、銃撃戦だ」



中也の手が銃弾の山に触れる。
重力を操られた銃弾は意思を持ったように浮き、そして狙いを猟犬に定める。
銃弾が雨のように降り注いだ。
それを猟犬は刀で的確に弾く。
生まれた隙を彼は見逃さず国木田達に叫んだ。



「今だ!掴まれ!」



降ろされたロープを掴み、その場からの逃亡は達成された。
揺れるヘリの中で、国木田の低い声が響く。



「真逆…マフィアに助けられるとはな…」



「助ける?莫迦云え。
お宅の社長が首領と取引したんだよ。
救助の対価は『社員一人のマフィア移籍』だ」



その言葉に一同の顔に衝撃が走る。
あまりにも予想を超えた対価に驚いているのだ。



「使いやすい異能犯罪者は大歓迎だぜ」



「社長が…!?」



「あぁ、…あと個人的にもう一人、取引した奴がいる」



福沢の他にも取引をした者が探偵社にいる。
この状況でそんなことが可能なのは、いったい。



「取引した奴はAだ」



「Aが…!?」



「彼奴は俺相手に取引を持ちかけて来た。
それを承諾し、手を組んだだけだ」



「何の取引を…」



「…そりゃ云ぇねぇ。
だが彼奴自身、相当まずい状況に立たされてんのに取引を持ちかけてきた」



「まずい状況だと?」



「知らねぇのか。…彼奴、殺されそうなんだよ。
猟犬に狙われて、今ギリギリんとこ歩いてんだぜ」



それでも彼女は中也に取引を持ちかけた。



「彼奴から伝言だ。…絶対に死ぬなって」



少女は己の魂を削る。
全ては大切なものを守る為に。

二百十二話 [生命の燃料を注ぐ]→←二百十話 [死の天使]



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riia - こんなに長いお話は初めてみるので尊敬します!他の夢小説よりちゃんとしていてすごく面白いです!神作だと思います!大好きです!登場人物の性格もちゃんと掴めていて見ていて楽しいです!ほんとに文ストの中に居そうで違和感がありません!設定とか凄いと思います!! (2022年8月5日 16時) (レス) @page24 id: 9d716aa4c8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - †三毛猫†さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。泣いていただけたようで、書いているこちらとしてはとてもありがたい事です。とても嬉しいです。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2019年5月19日 12時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
†三毛猫†(プロフ) - 毎回、夢主ちゃんの過去のお話しで泣いてしまいます。こんなに感動できる物語がかける作者さんを尊敬してます (2019年5月18日 19時) (レス) id: a139b9767e (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - さくらかつきのようになりたい←さん» コメントありがとうございます。そんなに喜んでいただけるとこちらとしても書いていてよかったと思います。近々、第7章を出しますのでよろしければ読んでください。皆様の応援、大変嬉しいです。今後とも、この作品をよろしくお願いします。 (2019年5月18日 13時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
さくらかつきのようになりたい← - BEASTも楽しみにしてます!小泉ちゃんがどう活躍(?)するのか…アッダメだ私の脳じゃ思い付かない…!!(←)コホン…体調にも気を付けて、作者さんのペースで更新して下さい!(← 何か上からで済みません…!!)我々読者は何時までも待ち続けております!!長文失礼しました! (2019年5月17日 20時) (レス) id: 1276fff981 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年6月9日 19時

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