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二百三十六話 [代償の痛み] ページ38

時が止まったようだった。
仲間は誰も動けなく、話せもしない。
特殊部隊の者達もAの声の冷たさと、事態の異常性に動けなくなっている。
動けなくなった仲間の戸惑いに歪んだ目に見つめられ、
漸く事態の異常性に気づいた瞬間、ハッとした。
頭がいつものように感情を取り戻していく。



「ッ、はぁッ、はぁッ、…」



『今のは、なに…!?』



貪るように息をすると、与謝野達の体が漸く動く。
今、なにが起こった?
今、自分はなにをした?



「ッ、どけ」



動けるようになったことで、広津は賢治の胸に刺さった刀を
彼の異能である『落椿』の反発力で抜き放つ。
カラン、と地面に刀が落ちた。



「…説明は後に求めよう、今はマフィアの秘密通路へ逃げる」



広津の目がAを一瞥した。
なんで、これは私がやったというのか?



「来い」



なにも判らない。
でもついて行かないと、と立ち上がろうとした時、



「何やってんだ!行くぞ!!」



叱咤するような声と共に立原に腕を引かれる。



「ッ、」



今は、走るしか無かった。
猟犬の牙はもうすぐそこまで迫っている。



「現地隊員から出動要請、来ました」



受話器を置いた猟犬の一人は、他の猟犬にそう告げた。
準備は出来ている、さぁ、狩りの時間だ。
この場のリーダーたる猟犬は刀を持って一言。



「行くか」







銃弾が飛来する。
社会の敵を排除する正義の使途たる特殊部隊から逃げるように、隠しエレベーターに投げ込む。
立原に手を引かれたAが飛び込んだ瞬間、扉は完全に閉まった。



「くそったれ!だから云ったろ!罠だったんだよ!」



苛立ったように壁を蹴る立原の右手はAの腕を掴んでいた。
混乱のあまり離すのを忘れていたようだ。
だがそれに立原が気づくより前に、



「ッ、A!」



Aが頭を押さえて膝をついた。
与謝野がAに駆け寄るが、それどころでは無かった。
頭が、割れるように痛い。



『痛い、鼓動も速くなってる…』



心臓も激しく音を立てている。
ズキンズキンと脳の奥が揺らされるような痛みにAは頭に爪を立てる。
その痛みはまるで、先程の代償を味わわせるようだった。
この痛みはあれと関係があるのか?
その痛みはなんの意味がある?
そして先程のあれは一体、そこまで考えて、疑問は最後激しい痛みに掻き消された。

二百三十七話 [あの時の音は]→←二百三十五話 [支配者の目覚め]



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riia - こんなに長いお話は初めてみるので尊敬します!他の夢小説よりちゃんとしていてすごく面白いです!神作だと思います!大好きです!登場人物の性格もちゃんと掴めていて見ていて楽しいです!ほんとに文ストの中に居そうで違和感がありません!設定とか凄いと思います!! (2022年8月5日 16時) (レス) @page24 id: 9d716aa4c8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - †三毛猫†さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。泣いていただけたようで、書いているこちらとしてはとてもありがたい事です。とても嬉しいです。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2019年5月19日 12時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
†三毛猫†(プロフ) - 毎回、夢主ちゃんの過去のお話しで泣いてしまいます。こんなに感動できる物語がかける作者さんを尊敬してます (2019年5月18日 19時) (レス) id: a139b9767e (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - さくらかつきのようになりたい←さん» コメントありがとうございます。そんなに喜んでいただけるとこちらとしても書いていてよかったと思います。近々、第7章を出しますのでよろしければ読んでください。皆様の応援、大変嬉しいです。今後とも、この作品をよろしくお願いします。 (2019年5月18日 13時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
さくらかつきのようになりたい← - BEASTも楽しみにしてます!小泉ちゃんがどう活躍(?)するのか…アッダメだ私の脳じゃ思い付かない…!!(←)コホン…体調にも気を付けて、作者さんのペースで更新して下さい!(← 何か上からで済みません…!!)我々読者は何時までも待ち続けております!!長文失礼しました! (2019年5月17日 20時) (レス) id: 1276fff981 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年6月9日 19時

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