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二百二十六話 [君も罪の子、我も罪の子] ページ28

探偵社指名手配から十二時間後。
異能特務課、種田は意識不明の重体で病院の集中治療室で横たわっていた。
目覚めるのは四十時間後、もし、手術が成功すればの話だが。
種田を単身で敵と会わせてしまった部下達は悔しさをにじませる。
理由を問う部下に、安吾は静かに告げた。



「長官の異能は『近くで発動した異能の内容が判る』能力…。
それで数々の凶悪異能者を葬ってきた故の自信が、長官にはあった」



だが、犯人は異能者ではない江戸川乱歩だった。
安吾は眠る種田を見つめ、一人何処かへ向かう。



「目覚めるまで傍に居られた方が」



部下の言葉に、安吾は悲しげに長官とは仲が良くないと告げた。



「長官は人の命を数字で捉える。
百人を救う為には一人を犠牲にする。…僕はそれが厭でした」



天人五衰を発見し次第殺せと命令した種田。
彼は、特務課の使命は大勢の民の平和を守る事だと云っていた。
法など知らない、平和の為なら善人でも死んで貰うと。
魔女もその手段の一つだった。



『僕は何も判っていなかった』



種田の云う、平和の為に死んでもいい人命に、彼自身も含まれていることに。



「長官が目覚めるのは四十時後でしたね」



安吾の冷え切った声が、響く。
その声は切り捨てる覚悟が出来た者の冷たさを持っていた。



「長官が目覚めた時、事件解決を報告します。犯人全員、僕が殺す」



それが、平和の為ならば。
手を血に染める覚悟も厭わない。
正義の裏なんて、いつだって正しさの為の血で汚れているのだから。



「…はい、あの、あともう一つ」



安吾の覚悟を聞いていた部下の一人が、一枚の資料を渡した。
それは、この事件を起こした探偵社の、あの魔女の娘の資料だった。



「小泉Aの…情報ですか」



「はい、それが長官の机の上に」



未だ不明なところが多いせいか空白が目立つ資料の一番下で安吾は目を止めた。
異能力についての部分。



『神々の国の首都、異能力の詳細と異能力名を知った者の異能を操れる』



その部分に、黒いインクでバツが書かれていた。



『調査の結果、神々の国の首都は…』



別の空白にそう書かれ、文章は止まっていた。
間違い無く、種田の文字。
安吾はそれを握りしめ、ガラスの向こうで眠る種田を見つめた。
この続きには、なにが書かれる予定だったのか。
知る者の目覚めを待つばかりだった。

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riia - こんなに長いお話は初めてみるので尊敬します!他の夢小説よりちゃんとしていてすごく面白いです!神作だと思います!大好きです!登場人物の性格もちゃんと掴めていて見ていて楽しいです!ほんとに文ストの中に居そうで違和感がありません!設定とか凄いと思います!! (2022年8月5日 16時) (レス) @page24 id: 9d716aa4c8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - †三毛猫†さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。泣いていただけたようで、書いているこちらとしてはとてもありがたい事です。とても嬉しいです。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2019年5月19日 12時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
†三毛猫†(プロフ) - 毎回、夢主ちゃんの過去のお話しで泣いてしまいます。こんなに感動できる物語がかける作者さんを尊敬してます (2019年5月18日 19時) (レス) id: a139b9767e (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - さくらかつきのようになりたい←さん» コメントありがとうございます。そんなに喜んでいただけるとこちらとしても書いていてよかったと思います。近々、第7章を出しますのでよろしければ読んでください。皆様の応援、大変嬉しいです。今後とも、この作品をよろしくお願いします。 (2019年5月18日 13時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
さくらかつきのようになりたい← - BEASTも楽しみにしてます!小泉ちゃんがどう活躍(?)するのか…アッダメだ私の脳じゃ思い付かない…!!(←)コホン…体調にも気を付けて、作者さんのペースで更新して下さい!(← 何か上からで済みません…!!)我々読者は何時までも待ち続けております!!長文失礼しました! (2019年5月17日 20時) (レス) id: 1276fff981 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年6月9日 19時

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