二百二十話 ［三匹の野良犬と神の目］ ページ20
状況は予想以上に悪化していた。
Aを狙う三つの動機。
その理由一つでも彼女を亡き者にするのは十分すぎた。
『一歩間違えば、死ぬ。
それどころか社の人達も死の危険が…』
隣を見れば同じことを考えているであろう敦が苦しげな顔をしていた。
魔人という怪物にこの三人で勝てるはずなどない。
『本当に、もう策がない』
太宰に頼まれたのに、思いを託されたのに。
なにも出来ない自分に苛立ちが募る。
『最悪、私が囮になって二人を逃せば…いや、それでも捕まる。
どうする、どうすれば…あぁ、もしかしたらもう逃げ道なんてないんじゃ…』
「この程度で諦めるのですか？」
落ち着いた声が鼓膜を揺さぶる。
咄嗟に声が聞こえた方を向くが、そこには誰もいない。
魔人との一件以来、全く聞こえなくなった幻聴が、自分に問いかけた。
「あぁ…そっか…」
母は自分にこの世界への片道切符を持たせてくれた。
今ここで諦めればそれは無駄になってしまう。
仲間を救い、守りたいのだろう。
そう、云っているようにも思えた。
『貴方の罪は、私が受け継ぐ。その信念も、強さもなにもかも』
敦もなにか聞こえたのだろう、何もない空間を見つめ、目に強い意志を宿した。
彼も気づいたのだ、このまま立ち止まっていても何も始まらないと。
「ある、一つだけ…探偵社の無実を証明する手掛かりが」
「あぁ…もうそこに賭けるしかない」
これは賭けだ。
とても大きく、そして犠牲を伴う。
だが今の策、『中也との取引』が完了していない今となってはそれしかない。
「虫太郎？」
「うん、事件の直前乱歩さんに警告した人だよ」
小栗虫太郎という男は乱歩に警告をしていた。
探偵社に来る大きな仕事を断れ、と。
「彼は今回の計画を知ってた。 きっと真犯人の正体も掴んでる」
「その上で警告したわけか…」
「うん、若しかしたら探偵社を元に戻す方法も」
「…でも今は行方不明。どうやって捜せば」
「方法ならあるさ」
「？」
首をかしげる鏡花に、Aは少し先にある監視カメラを指差した。
あれこそが、勝利への希望。
「フィッツジェラルドの『神の目』だよ」
「神の目で、彼を捜す」
大きな賭けが始まろうとしていた。
二百二十一話 ［手離してやれない］→←二百十九話 ［少女を狙う三つの刃］
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riia - こんなに長いお話は初めてみるので尊敬します！他の夢小説よりちゃんとしていてすごく面白いです！神作だと思います！大好きです！登場人物の性格もちゃんと掴めていて見ていて楽しいです！ほんとに文ストの中に居そうで違和感がありません！設定とか凄いと思います！！ (2022年8月5日 16時) (
レス) @page24 id: 9d716aa4c8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - †三毛猫†さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。泣いていただけたようで、書いているこちらとしてはとてもありがたい事です。とても嬉しいです。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2019年5月19日 12時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
†三毛猫†(プロフ) - 毎回、夢主ちゃんの過去のお話しで泣いてしまいます。こんなに感動できる物語がかける作者さんを尊敬してます (2019年5月18日 19時) (レス) id: a139b9767e (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - さくらかつきのようになりたい←さん» コメントありがとうございます。そんなに喜んでいただけるとこちらとしても書いていてよかったと思います。近々、第７章を出しますのでよろしければ読んでください。皆様の応援、大変嬉しいです。今後とも、この作品をよろしくお願いします。 (2019年5月18日 13時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
さくらかつきのようになりたい← - BEASTも楽しみにしてます！小泉ちゃんがどう活躍(？)するのか…ｱｯダメだ私の脳じゃ思い付かない…!!(←)ｺﾎﾝ…体調にも気を付けて、作者さんのペースで更新して下さい！(← 何か上からで済みません…!!)我々読者は何時までも待ち続けております!!長文失礼しました！ (2019年5月17日 20時) (レス) id: 1276fff981 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もこすけ
| 作成日時：2018年6月9日 19時
