ポックリ79 ページ29
ある日の晴れ渡った空の下
横浜にある倉庫の一廓から轟音と共に朦々と煙が立ち込める
敦「爆発…何だ?」
中島敦は青空を蜥蜴の如く這って行く狼煙を探偵社の窓から見上げていた
伝う振動に小さく息を呑む
彼は逸早く爆発の原因を確かめるべく足を動かした
一『え、敦?!』
敦「直ぐに戻るから…!」
茶那が焦った様に飛び出す敦を引き留めようとするも
奥から彼女を呼ぶ声に応じる為仕方なく背を向けた
一『何ー、どしたー?』
呼ばれた方へ行くと、累音が手をひらひらさせていた
枯『今の爆発音って黒蜥蜴の襲撃だろ?』
一『うん、敦も今でてった所』
枯『じゃああと少しでここに来るのか』
一『お前ここに居ていいのかよ』
枯『あ。』
_______
人混みを掻き分け、現場に近付く
謝りながら進んだ先で目に飛び込んで来たのは
黒ずんだ混凝土、骨組みがむき出しになった壁、散らばる瓦礫
所々に転がる遺体には布が被せられていたが、微かに血の匂いが感じられた
立入禁止の黄色いテープの向こう側はまるで別世界の様に凄惨な光景だった
野次馬が口々に「酷い…」「皆殺しだと…」と囁きあって居るのが自然と耳に入って来た
「軍警が言うには、ポートマフィアの武闘派…その中でも特に凶暴な実働部隊
《黒蜥蜴》
って奴らの仕業だって…」
「特殊部隊並みの実力…」「極めて残酷…」
敦「ポートマフィアの…黒蜥蜴…」
もしそんな奴らが探偵社を襲って来たら…
嫌な考えが脳に浮かぶ
それは正しく「「最悪の状況」」だった
__________
敦は探偵社に戻ると、沈んだ顔の儘自分の荷物を纏め始めた
一『あ、おかえり敦…え、何してんの』
敦「茶那…」
一『どったん?』
敦「ううん何でもない。心配しないで、もう茶那が危険な目に合う事はないから」
茶那は「何だ此奴」と顔を顰めた
そして敦は茶那に「ここにいれば大丈夫」とだけ言い探偵社を出て行ってしまった
______
敦「きっと僕がポートマフィアに行けば、探偵社が襲われない」
そうすればみんなに迷惑はかからない
黒蜥蜴が来ることもない
茶那もきっと…
_____出て行け穀潰し!!!!!!
脳内に染み付いた院長の声が響く
そうだ
僕は誰の役にも立てないような穀潰しだ
でも、せめて最後に誰かの役に立てたなら
いつか報われる事が出来るのかな
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作者名:chizomeと818猫とプチネコと茶々と___。 | 作成日時:2019年6月9日 12時