45’ 宇佐美栞 ページ2
続きと行く前に少しおさらいしておこう。
近界民に関する調査という名目で、近界民バレを防ぐために転校を繰り返していた俺。
中学生活最後の転校で、偶然にも修と空閑と再開したまではいいが、早々にイレギュラー門が発生した。
奔走する俺。余裕な迅さん。B級に昇進するメガネ。
ソフトドリンクで乾杯して一件落着。
そんな日常の中、俺は玉狛転属の許可をもらい、遊びに来ていた。
2階へ上がって、最初に抱いた印象は、支部にしては部屋の数が多いことだった。
これがほとんど空き部屋なのだと言う。
「使っている部屋を紹介した方が早いね」
こっちは迅さん、こっちはレイジさん。
順に見て回るも、どの部屋も似たようなもので、部屋を決めるのは難しかった。とりあえず、目に付いた部屋に決める。
前に使っていた人が置いていった物なのか、幾つかダンボールがそのままだ。
箱の中身は見かけだけで、大きなロール紙と空き箱が詰まっている。
宇佐美先輩はそれを持ち上げて言った。
「じゃあこれは持って行っちゃおう」
「ありがとうございます」
俺も別のダンボールを抱えて、ほとんど倉庫になっているという空き部屋に持って行く。
何度か往復して、俺が最後のダンボールを運ぶことになった。宇佐美先輩は、もう一つの残っていたダンボール運び出しており、部屋にいない。
ベッドと机だけが置かれた部屋を見て、何の感慨も無い自分に、悲しみすら覚える。
窓からは、静かに流れる川が見えた。
玉狛は俺にとって意味のある場所だ。
すぐには思い出せなくても、いつかは……。
途端、通信が途切れるように、視界が揺れた。
明滅を繰り返す風景に目を逸らす。
こういうことは、たまにある。
それはサイドエフェクトを使った後であったり、無茶をした戦闘の後であったり、起こらないこともある。
今回はやけに遅れてきたようだ。
一際酷いな、と。この時はまだ、その程度に思っていたが、急に落ちる感覚があり、膝下に違和感を感じた。
「!?」
何が起きたのか分からなかった。
なんとか、手をついて倒れきることは防ぐ。そこではじめて、脚の感覚が無くなっていることに気がついた。
こういう時の対処法はただ耐える。それだけである。
いや。脚が駄目になったのは初めてだけど。
どれくらいそうしていたか。
宇佐美先輩が戻ってきていないことを考えると、そう時間は経っていないはずだが、その時。
「迅さんおかえり〜」
明るい声に、正気を取り戻した。
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作者名:駄作者ライム@白霧 | 作成日時:2023年2月26日 18時