短編集 (ページ8)

今日:43 hit、昨日:41 hit、合計:4,604 hit

_ ページ8

二人並んで晩御飯を食べ、片付けをしようと腰を上げるわたしに「片付けするわ」と珍しくキッチンへと向かう後ろ姿を見送る。

「ねぇワンさん、聞いた？片付けするわだってさ。珍しいこともあるもんだねぇ」

ワン！と元気に返事をするワンさんの頭をわしゃわしゃと撫で、大好物のおやつをあげる。

「ほんとワンさんもお前のこと好きだな」

背後からかけられた言葉に(もう洗い物終わったんだ。やれば出来んじゃん)なんて呑気な感想が思い浮かんだが、一瞬で消えた。

「え？」

「は？」

「なんて？」

「俺今なんつった？」

「ワンさんもお前のこと､､､」

「や、まて、ちがう。いや違わねぇけど」

「なに言ってんの」

「あーーー、さいっあく」

大きな溜め息をついてしゃがみ込む飼い主の元へ、尻尾を振りながら近寄るワンさん。

「へぇ〜、葛葉〝も〟わたしのこと好きなんだ」

「うっせ。最悪だ、まじで」

「違うの？」

「好きでもねぇ女ホイホイ家にあげねぇよ」

「わたしも好きでもない男の家にホイホイあがんないよ」

「は、どーいう意味」

「まさか女の子に言わすつもり？」

ア”〜〜〜〜と大きな声を上げて、ポリポリと頭を掻きながら気まずそうに目を逸らす。

「Aが好きだつってんだよ」

「なんで不服そうなのよ。わたしも、葛葉が好きだよ」

顔を真っ赤にしてそっぽをむく葛葉と、にこにこと笑顔で彼を見つめるわたし。その間でぶんぶんと尻尾を振るワンさん。

これからも3人で仲良く過ごしていこうね。