kzh | 2人と1匹 ページ7
「お邪魔しま〜〜〜す!」
大きな声を出して開けた扉の先で出迎えてくれたのは「うっせ」と顔を顰める家主と、短い尻尾をこれでもかと大きく左右に振るワンコ。
「ワンさん久しぶり!」
視線を合わせるようにしゃがみ込むと、チャカチャカとツメを鳴らしながら近寄ってきて、クンクン匂いを嗅いだり、ぺろぺろと舐めたり、お決まりの愛情表現で向かい入れてくれるワンさん。
「久しぶりってお前、先週も来てただろーが」
「あれ、そうだっけ?」
ライバー仲間である葛葉の家へ入り浸るようになったのはワンさんが来てからだ。元々動物好きのわたしだが自分一人で飼う勇気はなくて、葛葉が犬を飼い始めたと聞きつけ(半ば強引に)彼の家を訪ねるようになっていた。
「今日配信は?」
「んー今日はしないかなぁ。葛葉は?」
「俺も」
「じゃあ夜までいていいの!?」
「好きにしろ〜」
「やったねワンさん!夜まで一緒にいれるって!」
気が付けば毎週のように遊びに来るようになったわたしはすっかりワンさんとも仲良しで、おやつを上げたり飼い主に変わって散歩に出かけたりと、なかなか良い関係を築けていると思う。
「ね、本当に夜までいていい?」
「おー」
「ご飯作ってあげよっか」
ソファに体を預けてスマホを触りながら返事をする彼が、チラリとこちらへ視線を向ける。
「まじ?」
「ん、まじ」
彼はどうやらわたしの手料理を気に入ってくれてるようで、ワンさんに会わせてくれてありがとう代としてたまに振る舞っていた。
「ワンさんのお散歩がてらスーパー行こうよ、どうせ冷蔵庫空っぽでしょ」
まるでスキップでもしているかのように上機嫌なワンさんのリードを握りしめ歩くわたしの少し後ろを気怠そうに着いてくる葛葉。
「最近自分で散歩してないんでしょ」
「忙しんだよ、俺だってぇ」
「大人気ライバー葛葉くんは忙しいかぁ」
たわいもない会話を交わしながら歩いているとあっという間にスーパーに到着した。前で待機している葛葉とワンさんのために急いで買い物を済ませた。
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作者名:mog | 作成日時:2024年3月19日 20時