▽ ページ29
･
走るのが好きだった
庭先でシャボン玉をしたり花を見るのが好きだった
泥だらけになるまで遊ぶのが好きで、誰かに叱られた
かくれんぼをしたり、鬼ごっこをするのも好きで
ブランコやシーソーに乗るのも大好きで
高いところも平気でジャングルジムに乗った
｢この花はなんて名前？｣
｢それはたしか…ブルースターって花だったと思う｣
｢へぇー！きれい！｣
｢Aはこの花が好き？｣
｢うん、すき！｣
昔のことなんて覚えてない
でも、良太郎との思い出は思い出せる
ただそこに誰かもう1人いた気がするけれどぼんやりしていて
｢知ってた？花にはね、誕生花っていうのがあるんだって｣
｢タンジョウカ？｣
｢誕生日に合わせて色んな花があるの｣
｢じゃあ、僕にもAにもあるの？｣
｢うん、それに花言葉ってやつもあるんだって｣
｢じゃあ、あれは？｣
誰かにひとつひとつ教えて貰ったことがある
私の誕生日にはこんな花があって
花にはそれぞれ花言葉と言われるものがあるって
｢A、良太郎くん、ケーキが焼けたけど食べる？｣
｢ケーキ！！｣
｢食べる！！｣
2人で大きなケーキを食べた
甘いフルーツが沢山乗った、美味しいケーキ
覚えてる、覚えてるんだよ、ちゃんと今も
この夢を見ている時はすごく幸せなの
泣くことだってない、苦しくもない
ずっとずっと続けばいいのにって思うのに
夢の中の景色はいつも突然変わる
｢あなたはお兄ちゃんになるのよ｣
｢お兄ちゃんとして妹のことを守ってあげてね｣
次に見た夢は赤ちゃんを見つめる夢だった
女の人が穏やかに頭を撫でる
目を細めて笑った
小さな手に小指を乗っけると握り返された
小さな幸せが生まれた気がした
｢お母さんはお父さんのどこがいいの？｣
｢少し頼りないけれど…優しい人よ｣
｢おじいちゃんはどんな人？｣
｢お母さんはおじいちゃんに会ったことがないの、でも…強くてかっこいい人だったんだって｣
次は誰かが小さい子供の頭を撫でていた
大切な思い出を懐かしむような、そんな表情で
切なくも、幸せそうな、あたたかな夢
｢なんの話をしてたの？｣
｢少し前の話｣
幸せそうに笑う女の人の顔を見て
男の人も一緒になって優しく微笑んだ
どこかの誰かの、知らない時間
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 80人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぽちゃた | 作成日時：2022年4月6日 21時
