出会いは1冊の本より 8 ページ9
｢でもこれ…本当に私の大事な…｣
｢いや、別に疑ってる訳じゃないんですけどっ…不思議だなぁって！｣
しゅんと俯いてしまったAに、ブンブンと両手を振り必死に弁明するアレン。
紳士として女性を悲しませるなど有るまじき行為。
それに遠慮がちに目を合わせてくる彼女は身長差がある分必然的に上目遣いになる訳で…なんたる破壊力。
アレンはん"んっと気恥しさを咳払いで誤魔化した。
｢あの、この本開いてみて下さい｣
そう言われ本を受け取り表紙に手を掛けたのだが…
｢あれ…？開かない…｣
何度もグッと力を入れ開こうと試みたがダメだった。
そこにスっと彼女の手が伸びてきて、アレンと同様に本を開こうとした。
｢開かないでしょう？このままの状態では、私も開くことができないの。力を発動させることによって初めて開くんです｣
アレンの手にある本の表紙を、華奢な手の指がクイクイっ張る。
確かに彼女でも開かなかった。
｢力…ですか？｣
そう問いかけると、Aは見ててねと言いアレンから本を受け取り、そっと両手の平の上に置いた。
｢どうか私に力を。リブロ・ディ・マジーア、アプリーレ(本よ開け)！！｣
Aがそう唱えると、窓も開いていない室内にふわりと緩やかな風が舞い上がり、髪やワンピースの裾がふわふわと遊ばれる。
それと同時に彼女の手の上にあった本が浮き上がりキラキラと輝きだし、先程までうんともすんとも言わなかった表紙がパカリと開いたのだった。
そしていつの間に現れたのか、Aの右手には彼女の肩ほどまである杖を握っている。
その杖は黒く、上部には本の表紙に描かれていた黄金の鳥が鎮座していた。
それから彼女の左側の顔には赤い、アレンの星型のペンタクルと似たような五枚花びらの花模様が額に、その花から頬に向かって蔦模様が伸びている紋様が浮かび上がっていた。
神秘的とも言えるその光景に、アレンはぽかんと見つめるしか出来なかった。
こうしてこの本を操れるということは、確かに彼女のもので間違いはなさそうである。
｢ひ、開いた…｣
そんな言葉しか出てこなかったアレンにAは微笑んだ。
｢凄いでしょう？代々受け継がれる、力のある本なんです｣
｢その力とは、どんなものなんですか？｣
｢うーん、なんて言ったら…いいのかなぁ｣
実際に見てもらった方が早いので、また見ていて下さいとAは杖を構えた。
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作者名：もふもふ子 | 作成日時：2022年8月7日 21時
