出会いは1冊の本より 18 ページ20
「その呪いは、きっとアレンのお父さまの愛だわ。愛ゆえの呪い…。」
「愛…ですか?」
うんと頷いて、きゅっと両手を握り返してくれる。
「立ち止まるな 歩き続けろ…。とてもいい言葉だなって私は思う。でもときに残酷な言葉ではあるよね」
苦しいこと、悲しいことがあってもそれを何ともなかったかのように、それは痛みではないんだと言うように、生きろと。
ましてやアレンは幼くして大事な人だった養父を亡くした。
そんなの、どうしても嘆き悲しみ足は止まる。
小さな子が一人取り残されてしまっては、進む道がわからなくもなってしまう。
「それでもお父さまはよく言ってたという言葉のように、歩みを止めて欲しくなかったんだと思う。その想いを、呪いにして…」
AKUMAとなった自身をアレンが破壊し解放してくれたように、他のAKUMAの囚われた魂を助けてやって欲しいと。
己はいなくなってしまうが、立ち止まらず歩んでいって欲しいと。
その想いを呪いにして、愛しい子に道標を遺したのだと。
きっとそうだと思うと言って、Aはアレンのペンタクルがある部分を撫でた。
「そう…なの…かな」
そうポツリとついてでた言葉は不格好に震える。
そんなアレンにAは慈しみを湛えた目で見つめる。
「捉え方は人それぞれよ。でも私は、そう感じたの」
「そっか…そっか…。僕は本当に愛してもらっていたのだと、そう思っていいのかな」
「当たり前じゃない。育ててもらったんでしょ?そばにいてくれたんでしょ?色んなこと教えてもらったんでしょ?お父さま、絶対アレンのこと大事だった。愛して…くれたのよ」
「…はぃ…はいっ」
哀しみ、苦しみ、困惑、嬉しさ、愛しさ…色んな感情がごちゃ混ぜになりどんな表情をすればいいかわからないアレンは、いつものような貼り付けた笑みで何度も頷く。
それを見たAは、困った笑みを浮かべる。
「ねぇアレン…。アレンが時たま見せる感情を奥にしまい込んだ笑顔、私…好きじゃないな…」
ヒュっとアレンは息を飲んだ。
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作者名:もふもふ子 | 作成日時:2022年8月7日 21時