異能力：《カゲロウデイズ》【文スト】【(微量の)カゲプロ】

06.蠢いた ページ9

NO SIDE.


その問いの答えは、予想外のものだった。


敦「アイツは僕を狙ってる！！殺されかけたんだ、この辺に出たなら早く逃げないと───」


ここで国木田が動いた。敦の言葉を遮るように、彼に足をかけて払い、手首を捻って床へ叩きつけたのだ。


『うわ！！酷ッ！』

国木田「…言っただろう、武装探偵社は荒事専門。茶漬け代は腕一本か凡て話すかだ」

敦「……！」

『ていうか腕一本折らせてあげたら見逃してくれるの？？』

太宰「Aちゃん痛いところつくねぇ……」

『事実だもん』

太宰「まぁ…ね。…ともかく国木田くん、君がやると情報収集が尋問になるだろう？社長にいつも言われているじゃあないか」

国木田「……ふん」

『国木田っち、不貞腐れなくても生きてればいい事あるよー』

国木田「そんな慰め嬉しくもなんともないわ！！」


一方、太宰は敦に近づいてしゃがみ込み、話の続きを促していた。


太宰「……それで？」

敦「……うちの孤児院はあいつにぶっ壊されたんです」


敦の話曰く、虎が孤児院を襲って畑も何もかも荒らされ、それによって貧乏な孤児院が立ち行かなくなって敦は追い出されたのだということだ。

しかも孤児院には留まらず、敦を追ってヨコハマの街までおりてきたという。

それを聞いてさらに詳しい情報を得ようとする太宰たちとは対象的に、あれほど元気だったAは考えているのか眠っているのか、はたまたその狭間にいるのかと見紛うような虚ろな目をしていた。

太宰は一度それに目をやったが何事もなかったかのように質問に戻る。

話が落ち着いた頃、Aもいつもの目になってニコリと笑った。


『話落ち着いたみたいだね！』

敦「な、なんか他人事…」

『心外』


ここで、太宰が口を開いた。


太宰「敦くん、Aちゃん、これから暇？」

敦「嫌な予感……」

太宰「君が“人食い虎”に狙われてるなら好都合だよねえ！虎探しを手伝ってくれないかな？」

敦「い、い、嫌ですよ！！それってつまり餌じゃないですか！誰がそんな……ッ！」

『つかそれ僕関係ある！？僕、生憎暇じゃないんだけど！』

太宰「いやあAちゃんには一寸聞きたいことがあってねえ。こっちも別件の依頼なんだが……巷に“メデューサ”が出たらしくて」

敦「メデューサ！？」


“メデューサ”。

その言葉が出た瞬間、Aは何も変な様子はなかった。

ただ少し、髪が蠢いた(・・・・・)ようなだけで。


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