2 ページ45
死屍累々と倒れ伏した死体を足蹴に宛もなく進む。一旦波が引いたのか、施設から出てくる軍人はしばらくはいないようだった。
隣を歩く樹はまだ興奮しているのか、瞳孔を開きながらハアハアと口で息をしている。とりあえず落ち着いて休める場所を探そうと周りを見渡し始めた時...樹鼻が、ピクンと動いた。そのままスンスンと、先程獣化した時より引っ込みつつある鼻先が細かく動きだす。嗅覚が作動しているのだ。
スンスン、スンスン。言葉を発することもなく匂いの元を探る樹に大人しくついていく北斗。こうしている時だけ犬を散歩させているようだと、口に出すと確実に殴られるようなことを思いながら様子を見る。するとついに樹は一方向だけを見始めた。
狙いが定まったのやら、つられて見てみると確かに施設の影に蹲る1人の影。暗闇で見えずらいがどうにか目をこらすと、明らかに武装した男のようだった。
途端、樹が駆け出した。獲物を捉えるべく再び本能をさらけ出した彼を追うように続いて走り出す。早く日昇ってくんねえかな、俺この状態のコイツにずっとついてくの疲れるんですけど...そう感じ始めた時、違和感に気付く。
ー...あんだけ外に出た軍人がいた中で、なんでアイツだけはそこでじっとしているんだ?
明らかに1人の様子の男は何もしないでいる。じっと、誰かを待っているように...。
ーそういえば、礼拝堂で会った敵の服装の色と違う気がする。武器も見たことないような...まさか
謎の男はようやく襲いかかろうとする獣人の存在に気付く。その目でしっかりと姿を捉えた樹だが、北斗と同じように違和感の正体に気付いた。しかし勢いが止まらない!
「樹待て!!その人はー...」
閃光と共に男の姿が一瞬にして消えた。
...いや、閃光ではない。止まらなくなり幸い地面にそのまますっ転んだ樹は、衝撃で頭が冴える。あれは確実の人の形をしていた。
光が通過した先には、半泣きになった先程の男とそれを抱える小柄な男がいた。
そして、弾かれたように喋り出す。
「...もぉ〜!めっちゃびっくりしてんけど!なんなん!?俺悪いことしてへんって!!」
「マジビビった!!何!?てかファンタジスタじゃね...!?めっちゃ焦げた匂いする!」
「えぇ...!?うわあああ狼やん!!立っとるし!!誰!?食べんでください美味しくないです!?」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 799人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もえなっとう(プロフ) - 藤菜さん» こんばんは!いえいえ全然大丈夫ですよ!?いつもありがとうございます! (2021年1月28日 20時) (
レス) id: 9d4a7bc2ed (このIDを非表示/違反報告)
藤菜(プロフ) - こんばんは！余計な事を言ってしまってすみませんでした！続きを楽しみに待ってます！ (2021年1月28日 19時) (レス) id: f78a68b7f1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もえなっとう | 作成日時：2021年1月28日 18時
