会いたい。 ページ5
自室に戻ってベッドに倒れこんだ。
すると小さなバイブ音が聞こえてくる。
机の上にある携帯だった。
携帯を取り着信が誰なのか確認するとキヨだった。
「もしもし」
「良かった。もう寝たかと思ったわ。」
携帯越しに聞くキヨの声は何時も通り明るいけど
何故か寂しそうに聞こえた。
「なぁ、A」
「何?」
「会いたい」
キヨは前置きをせず、短く言った。
"って言ってももう家の前まで来ちゃってるけどな！"
と言ってキヨはハハハｯと笑う。
それと同時に外から笑い声が聞こえる。
本当に来ているようだ。
「今行くね。」
そう言って電話を切った。
リビングに行って""少し出掛けてくるね"と言うと
"体に気をつけて暖かくして出掛けなさい"と父に言われた。
母はまだ泣いていた。
家を出ると少し雪が降っていた。
「よっ!」
と言ってキヨが手を振った。
「お前、もう少し温かい格好しろよなー。風邪引くぞ？」
「キヨも寒そうな格好してるよ。人のこと言えないね。」
と言うと"道民は寒さに慣れてんの。"と膨れっ面をしながら言い返される。
「ん。」
キヨが左手を差し出した。
私は右手で手を握るとそのままコートのポケットに手を入れた。
「暖かいね」
「当たり前だろ？カイロ入ってっから」
満面の笑みで子供のように笑う彼に心が暖かくなった。
「道民は寒さに慣れてるんじゃないの?」
笑いながら言うと"Aの為だからいーの。"と言って歩き出した。
「どこに行くの?」
「秘密!」
そう言って彼はまた子供のように笑った。
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作者名：もちもち@きな粉もち | 作成日時：2015年12月22日 23時
