アメフリレインボウー2ー (ページ47)

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#47 After the rain ページ47

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雨が上がった。

私をとことん叩きつけた雨粒の束は

どうやら気まぐれな夕立だったらしい。

髙橋くんが残していった微かな香りが

リビングの青い空気に溶けていく。

──Aちゃんが好きだよ

＂だから、今度こそちゃんと守りたいんだ＂

彼の言葉に、私を見据える瞳に、嘘はなかった。

ずっと嘘をつき続けるのも

つらくて、苦しかったはずで

すべてを打ち明けることだって怖かったはずだ。

それでも向き合い寄り添おうとしてくれた彼。

私はもう何も持っていない。失うものもない。

あるとするならば、目の前に残された温もりだけだ。

消えかけた灯に再度光を注いで

消えぬように優しく照らし出そうとしている

髙橋くんのあたたかさだけだ。

そう思ったら、縋りたくなった。

見失いたくないと思った。

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髙橋くんの存在は、私の唯一の心の拠り所だった。

学校は違えど、自分の味方が1人でもいてくれる

そう思えるのはとても心強くて

居心地が悪い場所でも立っていることができた。

教室に入れば変わらず永瀬くんは私の前に座っていて

隣から常に監視されているような息苦しさがあっても

外へ出て髙橋くんといるときは心安らいだ。

何度も鳴り響いた永瀬くんからの着信は

見て見ぬフリをした。

そうやって日々を積み重ねていけば

きっとあっという間に卒業を迎える。

あと少し。

あと少しで永瀬くんの影さえも

目の前から消えてなくなる。

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昼休みは図書室に居座るようになってから数週間。

膨大な量の本を蓄えた等間隔に並ぶ書架の間を歩いて

特に読みたい本があるわけでもない中

適当に見つけた本に手を伸ばす。

そのときだった。

本の隙間から見えた棚の向こう側。

古本の燻った匂いと静寂に包まれながら

懐かしい薄茶色の大きな瞳と目が合った。

「あ…」

声にならない声が漏れ出たと同時に

手に掛けていた本を反射的に棚に押し戻す。

『まって』

静穏を守りながら控えめに放たれた柔らかい声は

動きかけていた足にブレーキをかけた。

姿の見えなくなった彼の声だけが

身体中を内側から赤く染めていく。

『…電話。1回でええから出てくれへん？』

背後で微かに聞こえた足音が遠ざかる。

そっと振り向いて見れば

永瀬くんはもうそこにはいなかった。

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