アメフリレインボウー2ー (ページ17)

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#17 nimbostratus ページ17

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永瀬くんは、静かに相槌を打ちながら

時に驚きもしながら、時間なんて一切気にせずに

最後まで隣で話を聞いてくれていた。

『あいつ、極度の肉食なんやな』

それが彼の第一声だった。

手の中のペットボトルのジュースを

勢いよく口に含んで空っぽにしたあと

蓋をしっかり閉めてから再び放たれた澄んだ声。

『でもそれって

不可抗力みたいなもんやし、ノーカンやろ』

なかったことにできるのなら、そうしたい。

だけど私にとってはそんな簡単なことじゃなかった。

男の人からすれば、永瀬くんからすれば

これはそんなに軽い事案なのだろうか。

もしくは、関係のない永瀬くんにとっては

やっぱりつまらなくて、どうでもいい事なんだろう。

そうだよ。あたりまえじゃん。

何を貪欲になってるの？

彼がここにいるだけで

話を聞いてくれただけでじゅうぶん。

あとは自分で消化していくしかない。

「ありがとう永瀬くん。話したら少しスッキリした」

本心でそう伝えて、

唇にキュッと力を入れて笑ってみせた。

つもりだった。

だけど永瀬くんは何も言わないまま

ただじっと私を見つめたあと、そっと口を開いた。

『ほんまは？』

「…え？」

『それは？何なん？』

ふと、目の前に細い指先が映り込む。

その指が差し示しているものが

それを映している自分自身の瞳だとわかったとき

『光っとるのは、俺の気のせい？』

ゆっくりと瞬きをしたと同時に落ちていったのは

とっくに引いていたはずの、一粒の涙。

そこから目を逸らすように立ち上がった永瀬くんは

持っていた空のペットボトルを

ゴミ箱の丸い穴にストンと落とした。

『俺さ、女心とか全然わからんけど…

それだけ大事なことなんやろ？』

振り向いた横顔。

暗がりの中、

背後から微かな光を受けて浮かび上がる表情は

やっぱりいつ見ても端正で、綺麗だった。

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