アメフリレインボウー2ー (ページ15)

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#15 nimbostratus ページ15

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永瀬くんは手にしていたスマホを

ポケットに滑り込ませると

うーん、と唸ってからおもむろに口を開いた。

『そんなたいした用はなかってんけど…

たまたまAちゃんを見かけたってだけで』

決まりの悪そうな顔をして一呼吸置いた永瀬くんの

次に紡がれる言葉を固唾を飲んで待った。

『だからそのー…あいつと付き合っとんのなら

俺、悪いことしたかなー思て』

「え…？」

『俺が初めてパン屋来たときも、文化祭のときも』

彼の言っている意味が、すぐにはわからなかった。

つまり永瀬くんは謝りに来たの？

なにそれ。

誤解。幻想。余計なお世話。

「…違うよ」

自分でも驚くほど低く重く落ちていった声は

深く冷たい夜の闇へと沈んでいく。

なに、私、怒ってんの……？

「付き合ってない」

『へ？そうなん？ほんなら随分仲ええんやな』

違う。

これは怒りでも苛立ちでもない。

「そんなんじゃないよ。そんなんじゃ……」

辛くて、痛くて、苦しいんだ。

思わず飲み込んだ震えた声は

この季節にしては肌寒い、

冷たい空気のせいにしてしまおう。

だってほら、夜風が揺らす濡れた瞳の奥が

なんだかとっても熱く感じる。

『ええぇぇ！！！待って待って、どしたん！？』

ほんと、どうしたんだろう。

永瀬くんが、滲んで見える。

瞬きをせずしてポツリと溢れ落ちた雫は

頬を伝って流れていく。

それは一度溢れ出したら

とどまることを知らなかった。

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