#find out.10 ページ10
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黙って口を尖らせていた私に
廉は変わらない口調のまま
『でもきっと大丈夫やろな』
「え、どうして？」
見上げた先、斜め上で微かに笑みを浮かべる横顔は
どこかで見たことのあるような
ほんの少しの切なさを含んだものと
重なって見えた気がした。
『Aには守ってくれる人がおるやろ？』
一瞬、ドキッとした。
誰のことを言っているのかわからなくて
うまく相槌もできずに戸惑っていると
『Aがおるとこなら
俺がいつでも駆けつけたるから』
そう言って私をチラッと見遣ったあと
歩く速度を少し早めたのはきっと照れ隠しで。
そんな廉の気持ちも、言葉も、仕草も、何もかもが
今の私の心を揺さぶってくる。
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出口の手前に見えたおみやげコーナー。
廉はやっぱり小さな子どものように
チンアナゴのぬいぐるみを手に取って首に巻いた。
『これええやん！枕！抱き枕でもええなぁ！』
「ほんとだ、かわいい」
どっちかというと
はしゃいでる廉の方がなんかかわいくみえたけれど。
『買ったろか？』
「えっ？廉が欲しいんじゃないの？」
『いや、欲しそうな顔しとったから』
差し出されたぬいぐるみは確かにかわいいけど
今日の廉との思い出を形に残すのが怖かった。
「でも抱き枕持ってるし！
ベッドの上結構渋滞してるからいいや！」
適当な理由を並べて断るのも胸が痛んだけれど
廉は「そっか」と、すんなり受け入れてくれて
何も買わずにそのまま水族館をあとした。
まだ明るく日が昇っている外では
日曜日の午後ということもあってか
周りを見渡せば家族やカップル
友達同士で遊びに来ている人たちで溢れかえっていて
そんな人混みの中を通り過ぎていくたびに
なぜだかたくさんの視線を感じていた。
最初は気のせいかとも思ったけれど
しばらく歩いているうちに
それは確信と共に納得がいった。
すれ違いざまに振り返る人は女の人ばかり。
注がれていた視線は私にではなく
私の手を引いてほんの少し前を歩く
廉へ向けられているものだった。
学校でモテるとは言っていたし
確かにドキッとする瞬間はたくさんあるけれど
やっぱり廉ってそんなにかっこいいんだ。
その視線に気づいているのかいないのか
そんなのは慣れっこなのか
スタスタと歩いていく廉。
その背中をみて、心がキュッと痛んだ。
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7日目の蝉(プロフ) - lemon09さん» lemon09さんコメントありがとうございます！めちゃくちゃ嬉しいです…！そう言ってくださる方がいて本当によかったです。読んでくださってありがとうございました！ (2020年12月10日 22時) (
レス) id: 8841233121 (このIDを非表示/違反報告)
lemon09(プロフ) - 急に終わってしまって寂しくなっちゃいました（笑）でも面白かったです、お疲れ様でした。 (2020年12月9日 4時) (レス) id: 2975f730a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：N | 作成日時：2020年3月12日 1時
