#find out.9 ページ9
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まるで小さな子供みたいに
今日の廉はずっとはしゃいでいる。
ジンベイザメを見ては「すげー！でけー！」の連発
ペンギンを見ては「かわいい」って言いながら
嬉しそうに写真を撮ったり
なぜかウキウキな廉に腕を引かれて
最前列で見たイルカショーでは
案の定びしょ濡れになりながら笑い合った。
二人でデートらしいデートはしてこなかったからか
そんな廉を見るのはなんだか新鮮で
だけど時折、ただ静かに目の前の水槽を眺める
廉の横顔はやっぱり少し大人で
蒼く拡がる水の光にうっすらと照らし出されて
深い藍色の影を作り出して浮かび上がる
そのシルエットは息を呑むほど綺麗だった。
「……廉」
『ん？』
そんな姿をみて自然とこぼしていた名前に
行き交う魚たちを目で追いながら
前を見つめたまま返事をする廉。
「……ありがとう」
自分でもよくわからないまま
その一言が無意識に口から紡ぎ出されたのは
この幻想的な雰囲気のせいだろうか。
『なにが？』
突然の言葉に驚いたのか
一瞬振り向いて不思議そうな目を向けたあと
廉はまた目の前の水槽に視線を戻した。
なにが？
自分自身がその言葉の真意を分かっていないのだから
特に深い意味はなかった。
それなのに、自分が発したその言葉に
胸の奥が締め付けられるような
そんな感覚を覚えたのはどうしてだろう。
「いや、その……海人に聞いた！
事故に遭った日、廉が真っ先に来てくれたって」
咄嗟に口をついて出たあの日のお礼は
今日廉に伝えようと思っていたことの一つで
我ながら上手く繋いだと思った。
そんな心があたふたな私とは裏腹に
廉は納得したように「あー」と小さく頷いたあと
ずっと見ていた水槽から目を離して歩き出した。
『まぁ俺があんだけ走って行ったのに
着いたら誰かさんはスーピー寝とったけどな』
「それは、…ごめん」
申し訳ないと思いながら本気で落ち込む私の頭上から
だははは！と楽しそうな笑い声が降ってくる。
『Aの鈍臭さもここまでくるとガチで心配やな。
弟があそこまで過保護なるんもしゃーないわ』
悔しいけど、否定もできない。
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7日目の蝉(プロフ) - lemon09さん» lemon09さんコメントありがとうございます！めちゃくちゃ嬉しいです…！そう言ってくださる方がいて本当によかったです。読んでくださってありがとうございました！ (2020年12月10日 22時) (
レス) id: 8841233121 (このIDを非表示/違反報告)
lemon09(プロフ) - 急に終わってしまって寂しくなっちゃいました（笑）でも面白かったです、お疲れ様でした。 (2020年12月9日 4時) (レス) id: 2975f730a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：N | 作成日時：2020年3月12日 1時
