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#memory.33 ページ33

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神宮寺も一緒とはいえ、平野くんと花火大会なんて

何日も前からずっと落ち着かなくて

緊張しつつも胸を弾ませながら向かった

その待ち合わせ場所に

「……いた」

普段の見慣れた制服姿ではなく

Tシャツにジーンズというシンプルな服装ながらも

一際目を引くその佇まいに思わずみとれていた。

神「なーにしてんだよっ」

「ふぇ！？」

突然後ろから現れた神宮寺に

肩をぽんと叩かれ我に返る。

ニヤニヤしながら私の前に立った神宮寺が

一瞬、ほんの少し目を見開いたあと

一歩引いて上から下までジロジロとみてきた。

「……なに？」

神「かわいいじゃん」

神宮寺がそんなことを言うなんて

日常会話みたいなものなのに

不覚にも少しドキッとした。

「うるさい」

神「素直に喜べよ、かわいくないなぁ」

「どっちだよ」

女の子になら誰にでもそんなことを言ってそうな

神宮寺に言われると、ちょっとむかつく。

でも本当は、素直に嬉しかった。

神「なにしてんの？早く行こーぜ！」

すぐそこにいる平野くんの方を親指で示して

彼の方へと駆け寄って行く神宮寺の後を追いかける。

神「紫耀！」

振り向いた平野くんが

神宮寺をみて軽く手をあげたあと

その少し後ろに立っていた私に視線を移した。

いつもと違う雰囲気に

なんだか恥ずかしくなって咄嗟に下を向くと

平野くんはそんな私を、さっきの神宮寺と同じように

無言のまましばらくみつめてきた。

『Aちゃん、すっげーかわいい』

彼が発したその言葉に思わず顔をパッとあげると

眩しいほどに優しく微笑む平野くんと目が合った。

嬉しさと恥ずかしさで、言葉に詰まる。

神「おい！お前さっき俺には

＂うるさい＂って言ったくせに

なんで紫耀には言わないの？」

黙り込んだまま

おそらく顔が真っ赤になっているであろう

私の顔を神宮寺が覗き込んでくる。

「うるさい！

そういうのがうるさいんだって！黙ってて！」

照れ隠しをするために神宮寺に言い返したものの

きっと隠しきれてない。

熱をもった頬をそっと撫でた夏の夜の生ぬるい風が

なんだか心地よく感じた。

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