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#memory.26 ページ26

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まだ目に浮かぶ涙を

シャツの袖で乱暴に拭ってから

玄関の扉を開けて外に出ると

いつのまにか暗くなった空に浮かぶ

月明かりに照らされて

小さく肩を揺らしながら

まっすぐにこちらをみつめる廉の姿があった。

「れ、ん…」

その姿をみた瞬間、一度留めたはずのものが

また胸の奥から一気に込み上げてきて

それは瞬く間に溢れ出し、再び視界を滲ませた。

ぼやけた視界の先に揺れて映るその姿が

だんだんと近づいてくる。

それは目の前でぴたりと止まり

そっと伸びてきた手が頬に触れたかと思えば

その細くて長い綺麗な指が

私の瞳から溢れ出るそれをゆっくりとすくいとった。

『なに泣いとんねん、あほ』

その口調は、いつもの廉のものなのに

見上げた先にある、ビー玉のように透き通った

色素の薄いその薄茶の瞳は、優しく細められていた。

「だって…っ………れぇぇ──ん」

『あ～わかった、わかったから』

そう言って軽くあしらうように笑う廉は

やっぱりいつもの廉だったけれど

嬉しかった。

廉が、心配してくれたこと。

廉が、走ってきてくれたこと。

廉が、そばにいてくれたこと。

このとき流した涙は

ずっと抱えていた苦しみからくるものじゃなく

そんな廉に対する

安心感と、嬉しさからくるものだった。

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