恋する本屋さん６

P188 ページ9

雫が落ちる瞬間









暗転した世界









途端に広がる知らない煙草と香水の匂い









加奈「いやだ！！！離して…!!!!」




藤「…」




加奈「離してってば!!!」









私が暴れるほどに腕の力が強くなって









藤「絶対・・・離さない」





加奈「…イヤだ・・・離して!!」






藤「イヤだ!!!」





!!!




一際大きな声にビクつくと









藤「…滑稽だなんて思わない、惨めだなんて思わない…」









今度は優しい声色で









胸いっぱいに広がる






知らない香水と





知らない煙草の匂い









藤「ほっとけない。絶対一人でなんか帰さない…」









ふと私の力が緩まると



合わせてて緩められた腕









その隙間からゆっくり上を見上げると






とてつもなく切なそうで



でも優しい顔で









そっと私の頬の涙を親指で掬った









藤「俺は、どんな加奈ちゃんでも好きでいるから。…今は俺の方を向いてないけど・・・でもそれでもいいよ…」









加奈「…太ちゃん・・・」









藤「…今はいいよ・・・それでも、俺は絶対に離さないから」

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