恋する本屋さん６

P184（少し加筆） ページ5

＜加奈 side＞





太「知佳さんは海外で暮らして長いんですよね？」









知「そうだね…私が学生のときだから…もう１０年は経つかな」


太「知佳さんは、夢を追いかけてイギリスに行くとき…未練みたいなものは無かったんですか？」


知「未練？」


太「だって、全部置いて行ったんですよね？家族や友人や…それにマスターだって…。躊躇しなかったんですか？」



知「うん。全くなかったかな」









きっぱりと言い切った知佳さん








知「・・・確かに、一人で全く知らない国に行くのって、最初は怖いと思う。
それよりもワクワク感の方が勝ってたし…

人生一度きりで、行かないで後悔するなら、行って後悔したいって、ダメなら戻ってくればいいや！！！って思って・・・そう思ったら、スーツケース持って飛行機乗ってたんだよね、いつの間にか」









あっけらかんと、清々しい知佳さん





そんな知佳さんを優しい眼差しで見る雅貴さん…









加奈「・・・戻ってくればいいやって知佳さんらしい。・・・でも、戻ってくる場所あるから思いっきり飛び出せたんじゃないんですか？」




知「うん…それは、そうね。 私にはいつでも戻っておいでっていう場所があるから」



太「・・・マスターは、反対しなかったんですか？」


マ「どうして？」


太「・・・だって、心配じゃないですか？それにいつ帰ってくるか分からない状態ですよね…？」



マ「ははっ！そんな事か…」


太「そんな事、ですか？」


マ「ゴメン！ 距離は関係ないんだよ。どんなに離れていても、絶対に繋がってるって。
それに、俺が好きなのは、こういう知佳だから」


加奈「・・・こういう？」


マ「自分勝手でわがままで頑固で、でも真っ直ぐで全力投球な知佳。」



知佳「へへっ なにそれ!!! 自分勝手で頑固で我儘はそっくりそのままお返ししますー！」







そう言いつつも、穏やかに笑いあう２人…

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