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「ああ、言ってなかったっけ。さっきお母さんと連絡して、俺もしばらくそっちに住むことになった」
ピ、とICカードをかざしながら放たれた言葉に耳を疑う。
『…え。今から?私のとこに来るってこと?』
バス内を松葉杖で歩きながら混乱する。
「そうだけど?」
『に、荷物とか着替えとかは?』
「あるよ。病院に行く前に持ってきた。とりあえず明日1日必要なものだけ。あとはちょっとずつ持ってくる」
『…』
なんてことだ。予想外の展開だ。たしかに松葉杖生活は1人だと大変だ。
両親は共働きで朝早く夜遅い。梟谷まで通えない距離ではないし、兄がお世話役に適任だということか。
いや、ありがたいことだ。とても助かることなんだけど…。
「なにか都合の悪いことでもあるの?」
黙り込んだ私に、兄は黒い笑みを浮かべた。
『い、いやいや、まさか。とてもありがたいよ、すごく』
「Aが珍しく動揺してる…」
「あかーしこれはなんかあるよ」
後ろに座った研磨さんと黒尾さんが口を挟む。
『なんもないです』
額に冷や汗をかいた。
・
『今日は本当にありがとうございました』
家の前。黒尾さんと研磨さんにお礼を言う。
「お大事に〜」
「なにかあったらいつでも言って」
ありがとうございます、また明日。
_さて、ここからが問題だ。
「どうしたの?」
玄関の前で立ち止まっていると、案の定兄が首を傾げた。
『あの…ちょっと外で待って貰ってもいい?』
「なんで?」
『いや、その…折角来てもらうんだから、おもてなししないとなと思って…』
「そんな誤魔化し俺に通用すると思ってる?」
う。
『いや、誤魔化しじゃないし…』
もごもごしていると、はあ、とため息の音が聞こえた。
「だいたい何を考えてるかわかるから、もう入るよ。鍵貸して」
『…。』
「どうせ外で待ってたとして、その脚でどうこうできないでしょ」
…確かに。
『…怒らない?』
「怒らない怒らない」
ちょっと言い方に不安があるけど、なすすべが無い。しぶしぶと鍵を渡す。
部屋の入口にて。
「…はあ。」
二度目のため息にギクリと身体が硬直する。京治がくるっと振り返り、ジト目でこちらを見る。すかさず目を逸らす。
「こんなことだろうと思った」
『ゴメンナサイ』
そう、物語の始めに述べたとおり、私は兄と違ってズボラなのである。
兄は散らかる部屋に足を踏み入れ、片付けるよ。と一言だけ口にした。
『ハイ』
グッバイ、ぐうたらハッピーライフ…
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紅 - とっても面白いです!!続き楽しみにしてます! (2月23日 21時) (レス) @page47 id: 147f4e35b6 (このIDを非表示/違反報告)
いぬ。(プロフ) - みくさん» はじめまして!コメントありがとうございます☺️実は私も最推しが稲荷崎なので今後登場させたいなと思っていたので嬉しいです!頑張りますので楽しみにしていてください!💪 (1月4日 0時) (レス) id: 78842f5f3b (このIDを非表示/違反報告)
みく(プロフ) - コメント失礼します。めっちゃおもしろいです!あと個人的に北さんが好きなので絡ませてほしいです。いや全然絡ませなくても大丈夫なんですけど見てみたいなと思ったので。すみません口出しなんてして💦 (1月3日 23時) (レス) @page40 id: 2da07fc9ec (このIDを非表示/違反報告)
るぴ - イラストもお話も好き過ぎます!更新頑張ってください!応援してます…!! (2022年8月7日 5時) (レス) @page32 id: 6199d7d0b2 (このIDを非表示/違反報告)
はくろー(プロフ) - く・・・!なんだこの神作品は!?更新頑張ってください (2022年8月5日 4時) (レス) @page32 id: 4b5b41fa15 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いぬ。 | 作成日時:2018年9月17日 22時