妙な緊張感 ページ4
「ね、今日はちゃんと傘持ってきた？」
彼はそう言うと、大口を開けて幸せそうにコロッケパンを頬張った。
それだけ幸せそうな顔をするということは、きっと本当に美味しいのだろう。
今度私も、買ってみることにしようか。
「あー…うん。」
「…本当に？」
「いやぁ……。」
この時私が答えをはぐらかしたのは
“傘を二日連続で忘れたことが恥ずかしかったから” という単純な理由ではなくて
ただ、あの違和感を
もう思い出したくないからだった。
「…大きい。」
帰り道に差した黒い傘は、見た目の通り私の傘よりも一回り大きかった。
この持ち手を、ノサカくんもいつかの雨の日に握っていたのかと思うと
それは至極当然のことであるはずなのに
何故か不思議な気分だった。
「あ…あの。」
その次に私が瀬尾くんと話をしたのは、
翌日の朝のことだ。
「あ、乃坂さん！おはよ、どしたの。」
「おはよう。ノサカくんいる？」
「野坂？えーっと…。」
彼が教室の中を振り返って確認している間の数秒間、私を妙な緊張感が襲った。
あのノサカくんと話すと思うと
何故か心臓がぎゅっとつままれたような感覚が、一瞬で体中に走る。
「んー…今はいないみたい。サッカー部だし、朝練かな。」
「そっか、ありがとう。じゃあ、後でまた来るよ。」
何故今、心のどこかでホッとしたのか
私には分からなかった。
「あのー、すみません。」
放課後、もう一度クラスを覗いた時に私の声に振り返ってくれたのは
今度は瀬尾くんとは違う女の子だった。
「ノサカくんって、いますか。」
「野坂くん？さっき、教室出て行った気が…ねぇ瀬尾っち！そっちに野坂くんいる？」
突然 “瀬尾っち” などと彼女が呼ぶものだから、私は些か驚いたけれど
確かに彼は、“瀬尾っち” っぽい。
クラスの友達みんなにそう呼ばれているのだろうということは、容易に想像がついた。
「えー？いなーい！」
彼はそう言いながら、こちらに向かって小走りでやってきた。
まるで、ペットの子犬のようだ。
「多分ねー、部活行った。」
「えぇ、早いよー…。まだ傘、返してないのに。」
「あぁ、それ。野坂の机の横んとこにかけておこうか？」
「んー…いいや。私もうちょっとだけ探してみる。」
借りたものは、ちゃんと直接返したい。
瀬尾くんにそうしてもらったとして、部活で忙しい彼にお礼を言える機会がいつになるのも分からないのだから尚更だ。
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橋本アリィちゃん(プロフ) - とても泣けました！こんな感動作品を作って頂きありがとございました！今後とも応援しています！(*´ω｀*) (2021年11月4日 7時) (
レス) @page39 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
くゆぃ - この物語を生み出してくれてありがとうございます。余命あと1年で、辛くて仕方なかった時、まさに今、イナズマイレブンに出会って、野坂悠馬君が好きになって、あなたの小説を読ませていただきました。いなくなる前に、この小説を読めてよかった。よかった。ありがとう (2021年8月6日 23時) (レス) id: 47b282db84 (このIDを非表示/違反報告)
むい - ほんっとうにこの作品が大好きです！何度も泣かせていただきました。この小説が、命について深く考えるきっかけとなりました。最後に、本当に大好きです。ありがとうございました！ (2020年9月7日 14時) (レス) id: b5b9338b39 (このIDを非表示/違反報告)
ふるる。(プロフ) - 初コメ失礼します、ふるる。です！すっごくこの小説好きでした！命って大切だなと思ったし新しい生き方も学びました。完結おめでとうございます！ (2020年4月25日 10時) (レス) id: 28f80b2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
岡部 愛(プロフ) - この作品であなたを知り、一気に最後まで読みました。しかし言葉が出てきません。とても好きで、好きだという気持ちをなんと表現したらいいか分かりません。この作品でたくさん泣きました。あなたの他の作品も是非読ませていただきます。 (2020年4月25日 8時) (レス) id: fa9bcb142e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちまる。 | 作成日時：2020年4月4日 9時
