綺麗な血 ページ12
白い手から滴る鈍い赤色の液体が
不謹慎なことに僕には凄く綺麗に見えて
「…はは、あれ、ごめん。変なとこ…見られちゃったな。」
慌てながらも笑いかける君に僕はただ言葉を失ったまま、
その血だけをじっと眺めていた。
「おはよう野坂くん！今日はね、」
そんな事実がまるで起きなかったかのように、君はその翌日も変わらぬ顔で放課後僕の席にやってきた。
「…うん。今日は？」
だから僕も
君の流血に見て見ぬ振りをして、
いつも通りに話すしかなかった。
「私の実家に来て欲しいの。」
「実家？」
「そう！お父さんとお母さんに、挨拶。暫く帰ってなかったから。」
君の両親はとうの昔に死んでしまっているはずだ。
つまり挨拶とは、そういうことだろう。
「…うん。分かった。」
僕の予想通り、君はその道中で花と線香を買った。
君が死んだら、僕も偶然通りかかった店に入って花と線香を買うのだろうか。
そんなことを考えながら、仏壇用の花を抱えて歩く君の横顔をぼんやりと見つめて歩いた。
「じゃーん！到着。」
それは思ったよりも大きな一軒家だった。
もし君が死なずに王帝月ノ宮中を卒業したら、一人暮らしには広すぎるこの家で君は過ごすことになるのだろうか。
「うわ、何か埃っぽいね。やっぱたまには帰って掃除しなきゃダメだなー。」
そんなことをぶつくさと言いながら、君は廊下を歩いて行った。
僕はこの家のことをまるで知らないのだから、当然君がどこに向かっているのか分からなかったけど
君の後ろ姿を追いかける以外にすることがないということは、明確な事実だ。
「…ただいま。」
君の背中が止まった時、目の前にあったのは仏壇だった。
三人の家族写真がその付近に所狭しと並べられていて
僕の家庭よりも遥かに温かい家庭で育ったにも関わらず
それを失ってしまった君の胸の痛みを、ほんの少しだけ感じた気がした。
「お父さん、お母さん、この人野坂くんって言うの。私の彼氏。」
「…え。」
「うっそー！はは、そんな顔しないでよ。」
“そんな顔” がどんな顔だったのか、自分では分からない。
しかし君の唐突なその言葉に、些か驚いてしまったのは紛れも無い事実だ。
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ｶﾄﾗｵ - はじめまして！！もちまるさんの小説に出会えて毎日仕事終わりに読むのが楽しみで仕方ありません。まだ全部読み切っては無いのですが、感動とドキドキの展開を毎日楽しみにしていることだけどうしても伝えたかったのでコメントを残します。 (2020年7月22日 21時) (
レス) id: eccc16e070 (このIDを非表示/違反報告)
miginoaoi(プロフ) - 全部読みました。ボロ泣きしてしまいました…すごく切なくて感動する話ですね。続気が気になりました！今は無理でも貴方様の更新をずっとまちます！ (2020年1月15日 0時) (レス) id: 5d51d334c7 (このIDを非表示/違反報告)
ハニートースト 通称,ハニトン！(プロフ) - 作者様の作品は全て読ませていただきましたが、完全に虜になりました。言葉選びが繊細で、儚くて、思わず世界に入り込んだ気分で読んでしまいます。こちらの小説なのですが、co shu nieというバンドのアマヤドリという曲がピッタリだったので、伝えてしまいました。 (2020年1月6日 19時) (レス) id: b6696be840 (このIDを非表示/違反報告)
聖羅(プロフ) - 初めまして。この小説を読んで泣きました。もちまる。さんの小説がとても大好きでずっと待ってました。これからもずっと応援してます！ (2019年12月24日 23時) (レス) id: 07b14ef242 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ☆(プロフ) - 初めまして。君の脳になりたいの方を読んで此方にきました。私、本や映画を見ても絶対泣かないのに、この小説と君の脳になりたいの小説では泣きました。私は今不登校で、死にたいって思ってたけど、これを見てまだ頑張ろって思えました。何年でも待ってます。頑張れ！ (2019年11月28日 14時) (レス) id: 65ed62dd2f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちまる。 | 作成日時：2019年8月12日 21時
