サイレン多重奏 ページ9
だって…あれは。
野坂くんと、あんなに肩をくっつけあった日。
うっかりとひとつ間違えて、どこかの恋人みたいに手を繋いでしまった日。
野坂くんの肩に頭を預けて、その上にかぶさった彼の重みを感じた日。
そして何より…彼への恋心を、自覚してしまった日だった。
「どんな…って。その…何というか、早く誰か来てくれないかな、って。不安だし焦ったし…あはは、今となっちゃ結構、笑い話なんだけど。」
辿々しく、不自然に言葉を並べる。
追い詰められた割には、頑張った方だ。
そんな私を生温く逃がしてくれる彼ではないということは、既に痛いほど分かっているけど。
「笑い話？」
「あ…！笑い話というかその…良い思い出？何て言うんだろう、よく分かんないけど、」
「へぇ、結構余裕じゃん。」
______カチリ。
うわ。なんか聞こえた。今絶対、なんか聞こえた。
私の勘が正しければ、恐らく…いや、間違いなく。
彼の中のドSスイッチが、ONに切り替わったヤバイ音だ。
「…あ、あの？」
彼はコトン、と落とすようにペンを置いて、リビングテーブルを片手で退けながら無言でこちらに迫ってくる。
「あの時って、どんなんだったっけ。」
ジリリと後ずされば、背中が壁にピタリとぶつかる。
…わ、なんかデジャブ。
さっきのソファの事件と全く一緒。
「いや…その、あの。」
「ん？」
動けなくなった私の顔をジロジロと覗き込みながら、彼は隣に並んで座った。
「電波が通らなくて、停電して…。」
肩と肩が、ピタリとくっつく。
あの時と全く変わらない温度に、私の心拍数は急加速。
やっぱり今日の野坂くん、どっかおかしい。
彼の中に違う誰かが入っているっていうのは、もしかしたら本当の本当に、気のせいなんかじゃないかもしれない。
「で？」
彼はゆっくりと、腕を組んだ。
この次にされることが頭の中にハッキリと浮かんで、私の右手は必死になって避難する。
けど_______パシリ。
呆気なく捕まってしまったそれは、もう既に野坂くんの温度の中だ。
…指が絡む。
あの日、みたいに。恋人みたいに、全部の指が彼と互い違いに絡んでしまう。
「そうだ君。確かこの後、僕に思いっきり寄りかかって______」
「だ…っ、」
私の中のサイレンというサイレンが鳴り響いた。
火災報知器の上に緊急地震速報が被さって、ピーーー！という警告音が騒がしく頭の中を掻き回す。
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ららん - 野坂くんのかっこよさにドキドキしてます！続きが気になります！ (2022年4月23日 8時) (
レス) id: 8ab8086b1e (このIDを非表示/違反報告)
もも - どっきどっきしてるよ〜!!!更新楽しみです('▽'*) (2021年5月6日 23時) (レス) id: 150f83a4c1 (このIDを非表示/違反報告)
絵菜 - やった〜〜続編だ！！更新待ってます！！ (2021年3月7日 13時) (レス) id: da77361163 (このIDを非表示/違反報告)
はちみつ(プロフ) - とても面白いし、ドキドキしてニヤケ止まりませんでした笑更新頑張ってください！ (2020年12月27日 14時) (レス) id: 25159701e6 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ - 続編おめでとうございます！このお話大っ好きです！！更新待ってます！！ (2020年11月4日 20時) (レス) id: 023268ba1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちまる。 | 作成日時：2020年9月10日 11時
