過剰反応 ページ1
子供が笑うみたいに、彼は笑った。
「じゃあ一緒に海とか、行けないね。」
「海？」
自分の胸を使いながら、脱いだニットを器用に畳んでいく。
洗濯物は机に置かないと綺麗に畳めない私からすれば、どうして立ったままあんなに早くきちっと畳むことができるのか、不思議でならないところだ。
「水着だし。」
「…あ、いや……。」
海だ花火だお祭りだ、と意気込んだ今年の夏。その意気込みが実現していれば、私は今更野坂くんの着替えなんかに過敏に反応しなくて済んだだろうか。
だって海って、海パン1枚。
それが当たり前で、ごくごく自然。
「大体西蔭も他の部員も、上はよく脱いでるじゃない。」
そう言われてみれば、西蔭くんは部活のみならずこの家でも遠慮なく脱いでいる。
もはや上半身裸のムキムキマッチョが彼の“初期設定”であるような気すらしていたものだから、何とも思ってこなかった。
「あ…あんたは見慣れてないから、ダメなの！」
対して家でも部活でも滅多に脱がないのがこいつという男だ。
だからサッカー部のくせに“暑苦しい”みたいなイメージが一切なくて、ずっと爽やかでいるんだろう。…このやろめ。
「…あ、忘れ物。」
洗面所へのドアノブを握りかけた彼は、そう小さく呟いて、突然のUターン。
黒いタンクトップの上で光る銀色のネックレスが、私の真正面から近づいてくる。
「な、なな…まっ、待って！」
「え？」
まるで見てはいけない物を見てしまったかのように、私は慌てて両目を覆った。
「なになに。」
「いや…何でもないけど、」
指の隙間からチラ、と外を見れば、さっきキャリーケースから出したのであろう黒いポーチを拾う姿。
あれが多分、忘れ物だ。
再び洗面所の方へ爪先を向ける様子が見えて、ホッと胸を撫で下ろす。
「タンクトップで出歩いてる人なんて、夏はいっぱいいるじゃない。」
そう言った彼は、呆れ半分。
ここまで過剰に反応してしまう私の方が、なんだかよっぽど“変態”みたいだ。
…でもだって、ただでさえ顔が良い彼がその腕の筋肉をガッツリと出し、胸板の厚さがよーく分かってしまうピチっとしたタンクトップで目の前を彷徨いているのだ。
そんなの、簡単に直視できるわけないじゃないか。
「うるさいなぁ、早く入ってよ。」
「うん。出たらシュークリーム食べようね。」
その言葉に続いて、ガチャリ。今度こそ、洗面所を開けるドアノブの音がした。
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ららん - 野坂くんのかっこよさにドキドキしてます！続きが気になります！ (2022年4月23日 8時) (
レス) id: 8ab8086b1e (このIDを非表示/違反報告)
もも - どっきどっきしてるよ〜!!!更新楽しみです('▽'*) (2021年5月6日 23時) (レス) id: 150f83a4c1 (このIDを非表示/違反報告)
絵菜 - やった〜〜続編だ！！更新待ってます！！ (2021年3月7日 13時) (レス) id: da77361163 (このIDを非表示/違反報告)
はちみつ(プロフ) - とても面白いし、ドキドキしてニヤケ止まりませんでした笑更新頑張ってください！ (2020年12月27日 14時) (レス) id: 25159701e6 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ - 続編おめでとうございます！このお話大っ好きです！！更新待ってます！！ (2020年11月4日 20時) (レス) id: 023268ba1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちまる。 | 作成日時：2020年9月10日 11時
