紛い物 傭兵 ページ3
紛い物(暴力描写があります)
「あぁ？なんでだよ！俺以外の奴とべたべたしやがって！」
こんなことしたくないのに…
ガンッ、バキッ
「ごめんなさい…もうしないから。お願い殴らないで」
くそっ、またやっちまった。初恋の相手しかもAは何も悪くないのに殴るなんてどうかしているとしか思えない。でもどんなに殴るつもりがなくても、誰かと楽しそうにしているAを見るとどうもイライラとする気持ちが沸き立ってくる。
「あいつのこと殴って、傷つけて何が恋人だよ…朝になったら謝ろう。」
結局一睡も出来ず朝を迎えたが、Aのところに行くには早すぎたため窓辺に座って夜明け前の空を見つめていた。冬特有の冷え込んだ空気を吸うと頭がはっきりとしてきた。この空気は軍にいた頃を嫌でも思い出させるーー真っ赤な朝日が群青色の空に溶かし込まれる様子は少し残酷に見えた。
「悪かった…Aが誰かといると抑えが効かなくて…ほんとにごめんな」
痛々しげに巻かれた腕の包帯を見れば自分がどんなことをしてしまったかを痛感した。
「私は、大丈夫だから。ナワーブさんはやきもちやきなんですね」
その優しさに俺は何度救われたかわからないしかし、その優しさはAを傷つけ続けている。俺はAを幸せにしたくて思いを伝えたのになんでこんなに苦しいんだろうか。
「恋ってのはなぁ苦しいもんだぜ…誰かを愛するってのはえらく難しい。なんてな、お前らにはまだ早かったか？」
「よっ！隊長の長話きたー！」
「ったくうるせぇ、お前らより長生きしてんだぞ！」
あの夜の他愛のない話…隊長はなんて言っていただろうか？恋すれば、愛を知れば幸せになれるなんてほど世の中は簡単じゃないな…人を殺してきた俺にはもう誰かを愛する資格なんて随分昔になくしているのかもしない。
次の日、Aがゲーム中に倒れた。エミリー先生は過労だと言い張ったが俺にはわかった。彼女が倒れるほど消耗していたのは俺が暴力を振るったからだ。
「Aを大切しようと思うほどAをどんどん傷つけて、どれだけAが責めなくても、罪悪感は拭えないし…苦しい。こんなに苦しいなら愛なんて知らないまま生きていたかった。"嫌い"って、"もうやだ"って言ってくれよ−−そしたらこの紛い物の恋を終わることができるから…」
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作者 - パスワードを紛失してしまったため、もう一度別に制作することに致しました。ご迷惑をおかけしますがタイトルは変更しています。 (2021年7月12日 18時) (
レス) id: 58cd58d594 (このIDを非表示/違反報告)
あ - ご指摘ありがとうございます。訂正させていただきました。 (2021年3月7日 2時) (レス) id: 06202acefd (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2021年3月3日 14時
