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その後教室に戻ってきた織田くんたち。すると龍造寺くんは何かを思い出したかのように「ああ!」と声をあげた。
「確か井伊を見つける前、成田とすれ違った!」
その一言でクラス中が私の方へ振り返った。その視線のほとんどが鋭い。
「お前が裏切り者かなのか!?」
「違うよ!確かにすれ違ったけど、私は裏切り者じゃない。」
誰も信じてくれないと分かっているが、真実を主張するしかない。それをやめてしまったら本当に裏切り者にされてしまうし、犯人の思う壷だ。
「怪しいのには変わりねえだろ。」
「やめろや、Aちゃんがそんなことするわけないやろ!」
豊臣くんはそう言って私の前に立った。その背中に瞳が揺れる。結局龍造寺くんとすれ違ったのが教室を出て御手洗に行くタイミングだったため、その短時間で井伊くんを襲うのは難しいのではないかという結論に落ち着いた。でもそんなことはどうでも良かった。教室に漂う不安に反して嬉しいようなむず痒いような気持ちが心を包み込んでいたから。
「さっきはありがとう。」
「裏切り者じゃないんやろ?俺はその言葉を信じただけやで。」
豊臣くん自身も不安なはずなのに何故信じてくれるのか不思議で「証明することはできないのに?」なんて可愛げのない返しをする。
「俺にはAちゃんの言葉だけで充分。」
彼は本当に天性の人たらしだと思う、掻き乱されてばかりいる。気付いたら、一人歩き出す彼の服の袖を掴んでいた。
「……私も豊臣くんが裏切り者じゃないって信じてるから。」
振り向いた豊臣くんはとても驚いていたが、すぐ柔らかい表情へと変わり私の頭を撫でた。それは安心を覚えるほど温かかった。
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もちゃ(プロフ) - みーさん» コメントありがとうございます。こだわってるところ褒めていただけて光栄です。楽しみにしてくださってることも嬉しいです、ありがとうございます。 (2022年9月9日 3時) (レス) id: ecce92cfda (このIDを非表示/違反報告)
もちゃ(プロフ) - さくらさん» コメントありがとうございます。お返事遅くなってしまい申し訳ございません。好きと言っていただけて嬉しいです。応援もありがとうございます、頑張ります。 (2022年9月9日 3時) (レス) @page22 id: ecce92cfda (このIDを非表示/違反報告)
みー - このお話の2人の距離感が私も好きです!これからも楽しみにしています! (2022年9月5日 10時) (レス) id: ef372782cb (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - 面白くて好きです!更新頑張ってください! (2022年8月16日 23時) (レス) @page19 id: 2a8d4606f0 (このIDを非表示/違反報告)
もちゃ(プロフ) - moka、さん» コメントありがとうございます。試行錯誤しながらですが最初のうちは近すぎず遠すぎずを目指しているのでそんな2人の距離感を好きって言ってもらえて嬉しいです。感想、お気遣い、ありがとうございます。 (2022年8月11日 2時) (レス) id: ecce92cfda (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もちゃ | 作成日時:2022年7月29日 15時