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「旗印提出は、1年C組 大沢一郎くん。」
「どうも。」
「誰中の誰。」
期待も虚しく誰も分からないモブ生徒だったため今度はブーイングの嵐となった。
「大沢くんが出した旗印はこちらです。」
"2時間以内に武田信玄を倒す 大沢一郎"
「おい、嘘やろ。あいつが武田倒すんは無理やろ!」
「武田、舐められたもんだな。」
ザワつく周囲に対し、武田くんは何も言わない。
「あれが旗印?」
みやびちゃんが豊臣くんにそう聞く。
「そう。戦いたいやつがおる場合、旗にああ書いて提出すんねん。」
「大沢くんなんのつもりなんだろう。これだけで終わらない気がする。」
映像にもう一度注目すると魔村さんが口を開く。
「なお、同じ旗印が出ました。合計205本。」
……やっぱり。
「つまり武田くんが、205人と戦うってことですか?」
「しかし旗印戦は1対1なのでは?」
「旗印は1人に対して何人でも提出可能。」
皆の顔が曇る。
「そんなの、正々堂々とは程遠い……。」
「それでいいんだ、それが戦なんだよ。」
武田くんはずっと冷静だった。そう装っていたのかもしれないが。困惑の色が漂う中、上杉くん示し合わせたように205本の旗印が集まったことに疑念を抱くと、黒田くんが井伊くんの肩をトントンと叩いた。
「何だ?」
「まさか。」
「おいおい……え、何?
俺が他の連中に武田を倒す旗出せって、そそのかしたとでも?おい、やめてくれよお。」
井伊くんは席を立ち煽るように武田くんを見る。
「武田、絶対生きて帰ってこいよ。修学旅行行ってお揃いの木刀買いたいじゃ〜ん。」
「なせば成る、なさねば成らぬ、成るわざを。」
彼らの挑発には乗ることなく、そう言って武田くんは教室を出た。魔村さんの法螺貝の音により戦いの火蓋が切られると、教室では椅子を並べ黒板に映し出されるその様子を眺めることになった。その流れに逆らうようにみやびちゃんと織田くんもそれぞれ教室を出ていった。
「Aちゃん、ここおいで。」
「絶対に嫌。」
椅子を隣に並べると、ここと自分の膝を叩きアピールする豊臣くん。良い加減にしてほしい。
「豊臣くんってなんで懲りないの。散々拒否してるのに。」
「でも心の底から嫌とは思ってないんやろ?」
「はあ……。」
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もちゃ(プロフ) - みーさん» コメントありがとうございます。こだわってるところ褒めていただけて光栄です。楽しみにしてくださってることも嬉しいです、ありがとうございます。 (2022年9月9日 3時) (レス) id: ecce92cfda (このIDを非表示/違反報告)
もちゃ(プロフ) - さくらさん» コメントありがとうございます。お返事遅くなってしまい申し訳ございません。好きと言っていただけて嬉しいです。応援もありがとうございます、頑張ります。 (2022年9月9日 3時) (レス) @page22 id: ecce92cfda (このIDを非表示/違反報告)
みー - このお話の2人の距離感が私も好きです!これからも楽しみにしています! (2022年9月5日 10時) (レス) id: ef372782cb (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - 面白くて好きです!更新頑張ってください! (2022年8月16日 23時) (レス) @page19 id: 2a8d4606f0 (このIDを非表示/違反報告)
もちゃ(プロフ) - moka、さん» コメントありがとうございます。試行錯誤しながらですが最初のうちは近すぎず遠すぎずを目指しているのでそんな2人の距離感を好きって言ってもらえて嬉しいです。感想、お気遣い、ありがとうございます。 (2022年8月11日 2時) (レス) id: ecce92cfda (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もちゃ | 作成日時:2022年7月29日 15時