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【12】連絡先 ページ12

「…俺のこと嫌?」



『……ううん』



「タメ長くね」







正直言えば、好きではあるが苦手だ。



この3週間、背中をつつかれて振り返ってみれば、



めちゃくちゃ満面の笑みを向けられたり、



自動販売機前で財布を持って迷っていれば、



なにが良いの?、と声を掛けて奢ってくれたりした。



…要は、めちゃくちゃアピールされている。



多分、五条くん、夏油くん、硝子ちゃんの中では、



1番仲良くはなってるはずだ。



…ただ、人からの好意、というものを、



家族以外から露骨に向けられるのは当たり前に初めてで、



普通に戸惑っている。



どう躱したら良いか分からなくて、



五条くんの笑顔を向けられる度に、少し負担に思っていた。



だから、嫌いではないが、苦手だ。








「…どうしても嫌?」



『……うん、ごめん』



「Aちゃん」







断った瞬間、野次から声が入る。



私をこの中でAちゃん、と呼ぶのは1人だけだ。



私は夏油くんに目を向けた。







「悟が厚かましくてごめんね、嫌ならばっさり嫌って言ってやって」






少しだけ笑った私は、黙って首を振った。



すると、後ろから、私の肩に、手が回ってくる。






「…私も初期、2ヶ月は渋ったろ。



クズどもの着信うるさいし。



大丈夫、3週間も一緒に過ごせば、誰でも渋るから」



『硝子ちゃん』



「Aにも事情、あるでしょ。



ぐいぐい行くと余計嫌われんぞ、五条」



『…あの、私から返信がなくていいなら』



「…え?」







五条くんが口をパカッと開けてこっちを見た。



硝子ちゃんが、ほら、と言った。







「A良い子だから無理しちゃうよ、五条最低」



「えっ」



『あぁいや、無理はしてないの、



…その、メール読むだけ、になっちゃっても良いなら、』







五条くんの精神が揺らされまくりだ。



夏油くんが、本当に嫌じゃない?と聞いてくる。



私は笑って頷いた。



満面の笑みで携帯を取り出した五条くん。



私の携帯の連絡先が、3つ増えた。



…でも、自分を殺した相手に、連絡先交換なんて、



きっと五条くんが知ったら傷付く。



…ごめんね五条くん、そうメールを打とうとして、削除した。

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作者名:まる | 作成日時:2024年1月26日 7時

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