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第三百三十六話 ページ39

一反もめんに乗って叫び喚く名無しの元まで近付いていく。

あの中にまなちゃんがいる。

苦しんだりしていないだろうか。傷付いていたりしていないだろうか。

人の恨みを詰められるだなんて、どんなものなんだろうか。

心配が雪のように降り積もって刀を強く握る。


「僕が指鉄砲で穴をあけるからその間に入るぞ」

『わかった』

「遅れたりするなよ」

『何年君といたと思ってるのさ!』

「確かにそうだな」


互いに笑い合う。

目の前に恐ろしい強敵がいるというのに呑気に、いつも通りに。

四つ目のツノがある赤ん坊にどんどん近くなる。


やっぱり君と一緒にいると気持ちが落ち着く。

さっきまで恐ろしくて怖いだけだったあいつが君と一緒にいるだけできっと大丈夫だって思えるから。

幼くても小さくても彼の背は、手のひらは大きくて頼りになるから。

君を頼るばかりじゃ駄目だけどそれでもその姿を目に入れるだけでみんなの希望になる。


「指鉄砲!」


手を繋いで一反もめんから飛び降り、大きく叫ぶ彼。

青白い光が視界を覆っていく。

ずっとそばで感じてきた温度に心を落ち着かせながら彼の後を追うように落下した。


そして赤ん坊の額に大きく開いた穴の中にそのまま入り込んだ。








「…ここは」


目を開けば薄暗い洞窟のような世界が目に映った。

辺りを見渡しても黒い穴がたくさん開いているだけでそれ以外に道といえば今歩いている場所くらいだろう。

ここが名無しの中と考えていていいんだろうか。


不気味でも君と一緒なら大丈夫だと思えてしまう俺はおかしいかな。


そんなことを思いつつ、歩き出す鬼太郎くんについていく。

先も見えない暗闇に恐怖は感じない。


そう思っていれば後ろから細い手が八本伸びてきて俺と鬼太郎くんの手足を掴む。

そのまま強く引っ張られ、黒い穴に取り込まれていった。



「あいつらが悪いんだ」

「死ねよ」

「妖怪どもを殺せ!」

「人間を殺せ!」


「23時50分。ご臨終です」


頭の中に流れていく映像をじっと見つめていく。


名無しの手によりまなちゃんのお母さんが妖怪に見えるようにされたこと。

それを倒すために猫娘がまなちゃんのお母さんに牙を向けたこと。

まなちゃんがそれを見てしまうように仕組んだこと。

そして医者が名無しに操られ、わざと嘘をついたこと。


その作られた悲しみをまなちゃんに埋め込んだこと。


ふつふつと怒りが込み上げ、胸が熱くなる。

気付いた時には刀を抜いていた。

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とりまろ。(プロフ) - あんこもちさん» 鳥肌になってくれて嬉しいですわッッ!(((新章も始まりまして更新バリバリ頑張りますよ!コメントありがとうございます! (2019年4月30日 13時) (レス) id: ba9bcb022c (このIDを非表示/違反報告)
あんこもち - わぁぁ!凄い!全部の題名と繋がった!何か意味があるんだろうなぁ〜と思ってたけどほんとに合った!あそこ読むとき鳥肌やばかったです!鬼太郎と夢主ちゃんの恋の進展も気になる、、、。更新頑張ってください!長文失礼しました。 (2019年4月30日 8時) (レス) id: 209354e5c5 (このIDを非表示/違反報告)
とりまろ。(プロフ) - 待っていてくれてありがとうございます!不定期更新ですが完結まで頑張ろうと思います! (2019年4月20日 20時) (レス) id: ba9bcb022c (このIDを非表示/違反報告)
みっこ - 待ってました!忙しくて更新できない時が多いかもしれませんが少しずつ更新頑張ってください!これからも応援しますっ!(・ω・)ノシ (2019年4月20日 20時) (レス) id: f38aff3a8c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:とりまろ。 | 作成日時:2019年3月24日 15時

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