あの夏の過ち。〈降谷零〉 (ページ10)

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知ページ10

俺は大量のアイスを買わされ……………ることなどはなく。

「えっと、同じ学校に通ってます、C組の吉岡Aと言います…」

「ああ、えと、俺は諸伏景光です。A組です」

ぺこりと頭を下げ名乗り合い、彼女の……吉岡さんへの違和感みたいなものがやはりある。

派手な見た目に反してただただ普通というか。

馴れ馴れしく絡まれたりでもするのかと身構えていただけにいい意味で拍子抜けした。

これが所謂ギャップというやつか…？

「あの…いきなり話しかけちゃってごめんね」

「え？あー、全然。大丈夫」

当たり障りない言葉を交わしながら、体をアイスコーナーへ向き直してから、

ふと外の集団の人たちが脳裏を過ぎった。

「…あのさ、こんな時間に遊んでんの、危なくないか？」

「え？」

「外の人たち」

ツンと顔を上げ吉岡さんを見る。

うちの高校は偏差値の高い頭のいい学校だ。

そこに通う吉岡さんが髪を金に染め、ガラの悪い連中と夜遅くに遊んでる。

まあちょっとしたお節介というか。

夏休みという解放感と自身の好奇心だけで、危ない橋は渡らない方がいいんじゃないかという意味合い。

ただ単にこんな時間に知り合い……今知り合ったばかりだけど、

女子が彷徨いてるのは危ないんじゃないかと心配もある。

「あ…外の人たちは、別に知り合いではないよ…？」

「…え？」

「さっきコンビニ入る前にちょっと話しかけられたけど…友達とかじゃない」

そう言って少し寂しそうな横顔をする吉岡さんが不思議だったが

なんだ。そっか。杞憂だったか。

と自分の勘違いを謝罪しようとすぐにその感覚は消え去った。

……いや。でもちょっと待て。

「じゃあ一人でコンビニに来たのか？」

「うん。あの、アイス食べたくなっちゃって…」

視線を少し下げて恥ずかしそうにする吉岡さん。

どうやら買うものは決まったようで、その手にはアイスが収まっている。

女子がこんな時間に一人で外出していると知ったからには無視できない。

「吉岡さん、それ買ったら帰る？」

「え？んー……うん」

「じゃあ危ないし、送ってくよ」

ようやく俺もアイスを決め、会計する。

ぼーっと突っ立ていた吉岡さんも俺のあとをワタワタと慌てるように続き、

彼女の会計が終わって店を出る。

蒸した空気の歓迎に思わず顔が歪んだ。