あの夏の過ち。〈降谷零〉 (ページ7)

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ばれていたページ7

気づくと見られていて。目が合って。

そんなことが何度も何度もあって。

不快感この上なかった。

調子に乗ってか知らないが、派手な髪色に染め、注意されても直さない。

校則も守れないしょうもない馬鹿な奴。

それに加えて張り出されるテスト結果で、名前を知っているから興味本位で探してみれば毎回下の方。

ああやっぱりな。

予想通りすぎて呆れた。

娯楽に走って勉学を疎かにする。だからあのタイプの人間は嫌いだ。

少し前にヒロにそう愚痴ったら苦笑混じりに諭された。

嫌いな人間には関わらないようにすればいいけど向こうからガン飛ばしてくるし

俺の中で嫌悪感が増すのは至極当然だった。

「おい」

だからいい加減やめてもらおうと、肌寒い風が吹き始めた頃。

俺はようやく吉岡に声をかけた。

「え？……あ」

根元が少し黒くなり始めていて、全体的に色も落ちた髪が揺れて吉岡は振り返る。

俺を視界に捉えた途端目を丸くし、口を開けた間抜け面で固まった。

初めて間近に見た吉岡は、髪色に反して化粧などしてる様子はなく、

勝手な先入観でこの手の奴は化粧や爪をごてごてにしているイメージがあったから少し意外に感じた。

「吉岡さん、だよな？」

「…はい」

「俺のこと見るの、やめてもらえないか」

そう言うと収まり始めていた目を再び見開き、じわじわと頬は紅潮していった。

…こいつ、俺に好意があるのか？

中学生に上がった辺りから告白される回数がぐんと増え、

ある時女子の会話を偶然に耳にしたときに己の顔がウケがいいということを知った。

高校に入学してからも告白は何度も経験したし、だから吉岡もそうだと考えておかしくないだろう。

好意を持たれることは別に嫌ではない。

が、煩わしくはある。

付き合いたいという願望は特にないから断るのが面倒なんだ。

そんなことを考えながら唇を震わせて何かを言おうとする目の前の女子を冷めた目で見ていると、

「あ、あ、あのっ、ごめんなさい…！」

真っ赤とは言えないほんのり薄づいた頬、ぎゅうっと固く瞳を閉じて、

吉岡Aは言い逃げという言葉を体現してこの場から走り去った。

残された俺は、離れていく揺れる金色と、

言い逃げ直前の表情のギャップがチラついて、呆気に取られるしかなかった。