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なぜ私の名前を知っているんだろう。


最初に思ったのはそんな疑問と困惑だった。


けれどそれらは、じわじわと込み上げてくる歓喜にすぐに飲み込まれて消えた。


憧れの…手の届かないところにいる彼が、私の名前を知っていた。


驚きと嬉しさが込み上げて当然だろう。


そんな話を諸伏くんにしたところ、

「あ、それたぶん、俺がゼロに教えたからだよ」

何でもないように彼は言った。


なるほど。経緯はわかった。


結果を知ってから振り返ってみれば、


私と降谷くんには諸伏くんという共通の人物がいる。

単純に考えて、出処が諸伏くんである可能性が一番高い。簡単なことだ。


ただその考えに至らなかったのは…


「諸伏くん。私たちが知り合いなのは、降谷くんにも誰にも、バレないようにしようって言ったよね」


諸伏くんがホイホイと口を滑らすような人間ではないと思っていたからで。


「うん。だから吉岡と友達だって、言ってないよ」

「じゃあなんで、降谷くんに私の名前教えたの。どうして、どうやって」


暗がりの中の月明かりが、困った笑みを浮かべる諸伏くんをよく照らしてくれる。


「夏休み明けに、吉岡、職員室に呼び出されただろ?」

「…うん」

「そこに俺とゼロもいて。ゼロが吉岡のことを最初に認識したのが、たぶんその時」

「…うん」


…居た堪れない。

あの場面を見られてたなんて。


「で、それから、ゼロが吉岡にガン見されてることを認識してたから、

あの子C組の吉岡Aだよーって、それとなく」

「うっ…」


羞恥で咄嗟に顔を覆った。


「降谷くんにも見るなって…言われたけど、違うの…。無意識に目で、追っちゃうみたいで…」


違うの…違うの…とうわ言のように首を振る横では、笑い声が聞こえる。


「無意識って。ほんと、ゼロのこと好きだな」

「そりゃあ、うん…。すごく、尊敬してる」

「そっかそっか」


くつくつと笑いを堪える諸伏くんを見て、なんだか毒気を抜かれたような気分になった。


だから、つい、ぽろっと本音が零れた。


「…私、降谷くんに嫌われてると思うんだ。

それなのに明日から毎日って……私、これ以上嫌われちゃうかな…?」


気にとめないようにしていた不安。

言ってから、しまったなと思った。


気を使わせたいわけでも、何か言ってほしいわけでもないのに。


「ゼロは、嫌いな奴に自分から関わろうとするタイプじゃないよ」


諸伏くんは、いつもと変わらない柔らかな口調でそう言った。

今日も一日→←驚



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かものはし子(プロフ) - フライドポテトさん» 励みになるコメントをありがとうございます(*^^*) (2019年9月17日 13時) (レス) id: e4c7a737a2 (このIDを非表示/違反報告)
フライドポテト(プロフ) - めちゃめちゃ好きです。ドツボです。頑張ってください!!!更新待ってます。 (2019年9月17日 2時) (レス) id: 59946ff9b9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かものはし子 | 作成日時:2019年7月23日 18時

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