ありがた迷惑 ページ12
放課後。
帰る前に本を返却するというゼロに付き合い図書室へ寄ったが
「…うげ」
先に入ったゼロのそんな声に、何事かと眉を顰める。
「何。どうした?」
「…あいつがいる」
「あいつ?」
ゼロに続いて扉をくぐり入室する。
入ってすぐ、本棚に収まるたくさんの本以外に、広く設けられたスペースに置かれた机と椅子が目に付く。
言わば勉強スペースだ。
数人単位で勉強できるところもあれば一人用のための隔たりがあるところもかなり設置されている。
疎らに埋まった勉強スペースのある一人に、ゼロは憎々しい視線を向けていた。
「あー…」
視線の先には、教材とノートを広げシャーペンを走らせている吉岡がいた。
ゼロ、吉岡のこと嫌ってるもんな…。
「あんな奴でも勉強するんだな」
「そういうこと言うなって」
「あのタイプって自分磨きにかまけてそうだろ。実際髪染めてるし」
それは、まあ、理由があるからで。
…っていうのは、学校では他人のフリをしてほしいという吉岡のために、
俺達が知り合いであることを悟られないようにすると必然的に言えずにいる。
あの子はお前に憧れてるんだよ。
お前みたいにかっこよくなりたいんだって。
お前が思ってるような子じゃないよ。
何度もゼロの誤解を解きたくて。でも吉岡はそんなこと望んでないみたいで。
どうにかできないものかと俺自身ヤキモキした思いを抱えている。正直言いたくて堪らない。
「勉強してないから毎回テスト順位も下の方なんだ」
「…じゃあさ」
いいこと思いついた。
「ゼロが勉強教えてやれば?」
「は?」
吉岡はゼロと仲良くなりたいわけじゃないと思うし、ゼロも吉岡と関わりたくないと思う。
でもせめて、二人を関わらせて、吉岡はゼロの思ってるような子じゃないことだけでもわかってくれたら。
「おい、ヒロ…!」
ゼロの静止の言葉を無視し、他人のフリをして吉岡の肩を叩く。
「吉岡さん」
「はい…?」
初めて校内で吉岡と話す。
少しだけ大きく開いた吉岡の目を見て、サプライズをしてるような気分になって少し楽しくなる。
「学年トップが勉強見てくれるって」
「え…?」
「俺はそんなこと言ってない!」
ここは図書室だぞと口元に人差し指を当てて見せるとゼロは体を強ばらせた。
その隙に
「じゃあ俺は帰るから」
呆気に取られている吉岡と呼び止めるゼロに笑顔を向けて
俺はヒラヒラと手を振り図書室を出た。
113人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かものはし子(プロフ) - フライドポテトさん» 励みになるコメントをありがとうございます(*^^*) (2019年9月17日 13時) (レス) id: e4c7a737a2 (このIDを非表示/違反報告)
フライドポテト(プロフ) - めちゃめちゃ好きです。ドツボです。頑張ってください!!!更新待ってます。 (2019年9月17日 2時) (レス) id: 59946ff9b9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:かものはし子 | 作成日時:2019年7月23日 18時