言葉の裏 ページ6
おばちゃんが帰り、いつもと同じように夕飯を作る。
今日は肉じゃが。父さんの大好物。
母さんが使っていた料理本を見て作るから、自然と母さんの味になる。
「美味しいなぁ。昔と変わらない、優しい味だ。」
うまいうまいと頬張る父を見ると、暖かい気持ちが胸に広がる。
食事を終え一息ついていると、唐突に父が私にこう尋ねる。
「もしAが母さんのように軍人になったら…どうする？」
簡単に答えられないような質問を父は滅多にしない。文字で伝えなければならないから。沢山書くのは煩わしいだろうと気を遣う。
わざわざこんな事をするのは、私の本心を確かめたい時。でも今の質問は例え話だ。
…何故こんな事を聞くのだろうか。私が軍人になったら…。
悩んでいる私を見て、父は質問を変えた。
「どうするっていうのは曖昧だよな。…じゃあ、何のために戦う？」
何のために…か。私は少し考えた後、紙にペンを走らせた。
[もし軍人になったら、私は私の大切な人のために戦う。それは、父さんも、おばちゃんも、私を支えてくれている人みんな。皆が笑顔でいられるように、皆の幸せが続くように、自分の命を懸けて戦う。]
そこまで書いてペンを止める。これで質問には答えた。…あとは父さんの言葉の本当の意味を読み取るだけだ。
少し行を開けて、続きにこう書いた。
[でも私は軍人にはなれない。命を奪う覚悟がないから。人は皆、生きてるだけで価値がある。敵も味方も関係ない。けれどそんな甘い考えは、軍の世界では通用しない。だから私は母さんのような軍人にはなれない。]
私は書いた紙を父さんに渡す。
受け取った父さんは、読み終えると「なるほどなぁ…。」と言ったきり黙ってしまった。
父さんは私に何と書いて欲しかったんだろうか。
・・・
「(賢い子だ。)」
渡された紙を見て驚いた。
優しい子だと思ってはいたが、自分の信念もしっかりと持っている。
それだけでなく、此方の言葉の裏まで読んできた。この質問の意図もバレてしまっただろうか…。
命を奪う覚悟が無いというのは嘘ではないだろう。でも一番の理由は私と店の存在だ。
気を遣ってか、そんなことは一言も書いてはいないが。
それに…。アイツと同じことを言っている。アイツも"大切な人のため"とか、"愛する人のため"と言っていた。
「(まさか親子で同じこと言うとはな。)」
そう思うと、無意識に内に頬が緩んだ。
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ミノリ(プロフ) - あんさん» コメントありがとうございます！！！めちゃめちゃ嬉しいです！！なるべく早く更新できるよう頑張りますね！ (2021年2月1日 11時) (
レス) id: e01edd4ee3 (このIDを非表示/違反報告)
あん(プロフ) - とても面白いです！！！つい読みいっちゃいました！！！ (2021年2月1日 0時) (レス) id: b9be5feb1c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミノリ | 作成日時：2020年9月28日 11時
