36 孤独の美食家 ページ36
立派な建物ではあるが外壁がところどころ欠けていたり、塗装が剥げていたり。
経年劣化が窺い知れる。
いかにも老舗、という店構えを一目見て決めた。
ここだ。ここで小腹を満たそう。
のれんを潜る。
庶民で賑わっている。がやがやとした店内。大衆的な甘味処。
案内された席でお品書き表を開く。ほほう。あまり品数は多くない。あんみつの文字がデカデカと。一際目立っている。
なるほど、店主の自信が読み取れる。まさに自慢の逸品、といったところか。
ならば見せてもらおう。店主の漢気を。
わたしはあんみつを一つ注文した。
「はいよ、お待たせ！」
「お、おおぉ…」
見ただけで分かるほどもちもち弾力のある白玉、荒めにこされた餡子、瑞々しいみかん、色とりどりのそれらがまるで器の中で光っている…かのように美しい。
さてさて、どれどれ。いただきます。
木製のスプーンで白玉を掬い、口に運ぶ。
…うん。うんうん。
これ。これだよ。こういうのでいいんだよ。
お母さんが作ってくれたような、素朴な味。もはや実家並みの安心感。
あんみつには高級な具材も凝った具材も必要ない。
こういうのが正解。
また何度でも食べたくなるような、そんな味。
いやあこの店にして良かった。今求めていたものに出会えた。思わずにやけ顔になる。
「ご馳走様でした〜」
晴れやかな気持ちで店を出ると
知らないお爺さん二人を連れた尾形と鉢合わせた。
Aはいい気持ちなのであっ尾形〜と駆け寄ろうとしたが、思い出す。
宿を出るなと。そう言われていた身であった。
どうしよう。怒られる…！？
尾形は冷めた目をこちらに向けている。
辺りを見渡す。
鎮火してはいるが火事があったようだ。燃えたあとで煙が立つ家屋が少し離れたところに見える。
…これだ！！瞬時に言い訳を算段する。
「あっ尾形ぁ…あのね。近くで火事があったみたいでそれでね。尾形さんが巻き込まれてないか心配になって出てきちゃったの〜」
てへへ、と笑うA。
尾形はお爺さんに何か言ったあとこちらに近付いてきて何を思ったか、人差し指で顎をぐいっと上に向かせてきた。
二人は至近距離で目を合わせる。
どういうことか、と混乱していると顔が近付いてきた。
唇が重なるのでは…というところまで近くなると尾形の鼻がすんすん、と鳴った。
そしてAの後ろにある店の看板を一瞥したあと、唇を通り過ぎて耳元にやってきた。
「餡子ついてんだよアホ娘」
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メルテア(プロフ) - 炊きたてのお米くらいあっつあつじゃん？でもう笑いすぎて感想書いちゃいましたww主人公面白すぎるwww神作品ありがとうございます！！m(_ _)m (8月31日 8時) (
レス) @page28 id: 296f866ede (このIDを非表示/違反報告)
Chloe(プロフ) - 蛙奈さん» 蛙奈様へ。ありがとうございます！私の中で鯉登は普段ピュアピュアなのにたまに男らしさを見せるカッコイイ奴って感じだったりします！鯉登もちょいちょい絡んできますのでまた読んでいただけると嬉しいです！ (2021年10月10日 20時) (レス) id: b0de3b5808 (このIDを非表示/違反報告)
蛙奈(プロフ) - 鯉登少尉のピュアさに悶絶して思わずコメントしました…私自身鯉登少尉推しなのでとても嬉しいです！頑張ってください！ (2021年10月10日 16時) (レス) id: dbf954f045 (このIDを非表示/違反報告)
Chloe(プロフ) - 蛙奈さん» 蛙奈様へ。はじめまして！コメントありがとうございます！嬉しいです。色仕掛けちょいちょい出す予定です(笑)素敵なご感想ありがとうございました！ (2021年10月7日 19時) (レス) id: b0de3b5808 (このIDを非表示/違反報告)
蛙奈(プロフ) - コメント失礼します。とても面白いです！特に尾形の色仕掛けが色んな意味でドキドキしました！主人公の食いっぷりも読んでいてお腹が空いてしまいます。素敵な作品！更新待ってます。 (2021年10月7日 17時) (レス) id: dbf954f045 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Chloe | 作成日時：2021年10月5日 1時
