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自分がどれだけの間バスルームを占領していたのかはわからない。
ゆっくり入らないと殺すと言われてしまった手前、長い間膝を抱えてぼーっとしていたような気もする。
借りた服にくっついていたホテルクリーニングのタグを外して着替え、タオルを頭にかけたままバスルームの外に出た。
シャワーを浴びている途中、インターホンが鳴っていたのは気付いてたけど、そこでようやく何が来たのか理解する。
部屋の中はごはんの匂いで包まれていた。
「待ちくたびれたんだけど」
「言ってる事がさっきと違いますよ」
テーブルに置かれた様々な洋食を眺めながら、付け合わせのブロッコリーを一つ抓む。
それを見たウジヒョンがこっちに座れとドライヤーを用意した。
もしかして髪の毛を乾かしてくれると言うんだろうか。
まさか、この人が？
多忙を極めすぎて、とうとう気が狂ったんじゃ……
そんなことを口に出して言おうものなら本格的に怒られそうなので、ウジヒョンが指差した椅子に座る。
ヒョンはしたり顔をして、弱風しか出ないホテルのドライヤーにスイッチを入れた。
「A」
「ん？」
「髪の毛が多すぎる」
「仕方ないじゃないですか。ヒョンが髪の毛無さすぎるんでしょ」
「おい、もう少し言い方を考えろ」
「……じゃあ、髪の毛が短すぎる」
「それでいい」
声を張らなくても聞こえるくらいには風量が無い。
それにしてもウジヒョンは何でも出来るけど、美容師にもなれるみたいだ。
髪の毛を梳いていく手付きは思ったより優しくて、正直とろとろとした眠気が襲って来る。
瞬きを繰り返して耐えていれば、仕上がりに納得したらしいウジヒョンが「よし」と勢いよくコードを引っ張り電源を引っこ抜いた。
さすがの荒さ。
オイルも付けてなければ、まだ首の後ろが濡れている気もするけど、何の異議も無かった。
勿体ないくらい充分に思う。
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作者名：せの
| 作成日時：2019年8月22日 10時
