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no side





『ッ……!!』




駿東はガクンと座り込む。
得体の知れぬ恐怖に腰が抜けたのだ。




『い、きて……?お、おとさ、』




父親は死んでいる。
それは幼い駿東でも何となく察している。


だが父親の目が、爛々と光って見えたのだ。
生きているように、それはそれは生々しく。


しかしそれは当然と言っては当然なのである。
背後で揺らめく炎が光と影を生み出し
冷たくなった父親に表情を与えたのだ。






『なんで、にらむの、なんでこわいかおするの、』






駿東はブルブルと震えながら後ずさる。





駿東は5歳でも、ただの5歳ではない。
膨大な本の知識を得た「賢い」5歳だ。


故に"死"が恐ろしく、静かなものだと知っている。


「有り得ない」のだ。
父親が"生き返る"など、あるはずがない。


知っていてなお、駿東は怯えた。





『やだ、』





炎の光を反射して光る父親の目が駿東を捉える。





『うあ、あ、』





駿東に父親の目はまるで怒っているように見えた。
老婆が駿東をぶった時のような鋭い目。






「逃げるのか?」





駿東の耳にそんな声が聞こえた気がした。





『でも逃げなきゃ、』



「親を置いて?」



『だって、みんなは、』



「みんなは?」



『もう………』



「もう?」



『死んじゃっ……』



「話してるのに?」



『ッ、』





駿東はバッ、と耳を塞ぐと
震える膝で何とか立ち上がる。





『ちがう、ちがうの、
だっておとうさんは……「だんなさま」でしょう?

わたしは「いらない子」なんでしょう?
だから、わたしは、わたしは──────』





駿東は何とか一歩踏み出す。
それからは早かった。





大きな玄関の扉を開いて
転がり出るように外へ飛び出す駿東。





煙たくない新鮮な空気を胸いっぱいに吸って、
駿東は零れる涙を無視して大きく口を開いた。








『うあぁぁぁあああ──────』









喉が張り裂けそうになるくらい駿東は泣いた。









豪華な日本家屋が焼け落ちる音と、
駿東の泣き声に近隣住民が目を覚ます。



何事か、大丈夫か、と駿東に駆け寄る人々。
駿東は泣くことしか出来なかった。



見覚えのない少女が泣く姿に住民も戸惑ったが、
深夜に泣き喚く少女を放置するほど鬼ではなかった。

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の〜さん(旧もこ)(プロフ) - 沙羅さん» ありがとうございます(´;ω;`)無理せずに頑張ってください! (4月25日 6時) (レス) id: 79dfdf41ef (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - の〜さん(旧もこ)さん» ご意見ありがとうございます!一応「救済」路線で書いておりますので、余程のことがない限り……という予定です!駿東ちゃん頑張りますのでぜひ見守ってあげてください!(笑) (4月25日 1時) (レス) id: fccd246cdb (このIDを非表示/違反報告)
の〜さん(旧もこ)(プロフ) - あと誰にも氏なないでほしいです。 (4月24日 18時) (レス) id: 79dfdf41ef (このIDを非表示/違反報告)
の〜さん(旧もこ)(プロフ) - 沙羅さん» コメント返してくださりありがとうございます!LOVEの件もありがとうございます! (4月20日 17時) (レス) id: 79dfdf41ef (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - の〜さん(旧もこ)さん» コメントありがとうございます!逆ハー良いですよね♡なるべく多くのキャラクターを出して行けるよう頑張りたいと思います!Loveな雰囲気も出せるよう頑張ります!!更新ゆっくりになってしまっていますが、どうぞ今後ともよろしくお願いいたします! (4月20日 17時) (レス) id: fccd246cdb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:沙羅 | 作成日時:2021年5月5日 13時

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