許嫁で純愛【呪術廻戦】

二十九本 ページ30

no side





「やっぱ俺も行きますよ。」


「無理しないの。病み上がりなんだから。」


「でも虎杖は要監視でしょ。」


「まぁね。でも──────
今回試されてるのは野薔薇の方だよ。」




ところで、と地面に座っていた五条が
隣に立つAを見上げる。




「Aの出張先、何かあった？
あ、僕も恵もいるから普通に話して良いよ。」


『……』




Aは出張を思い出すかのように空を見る。





『……きりたんぽが美味しかった、とか。』


「(まさかの食べた物について……
この人もだいぶ自由だよな……)」


「お〜良いねぇ！僕も食べたくなってきた。」


『皆にお土産で買ってきた、から。
明日辺りお鍋にしようと思ってるよ。
恵達もおいで。』


「いやでも……」


「Aが言ってるんだしおいでよ。
交流会だよ、交流会。」





伏黒の気持ちを代弁すると
「この人たち自由すぎる」だ。





『……悠仁ってどんな子？』




ふとAが廃ビルを見上げて言う。





「ぶっちゃけ言うとねー……
悠仁はさ、イカレてんだよね。

異形とはいえ生き物の形をした呪い(モノ)を
自分を殺そうとしてくる呪い(モノ)を、
一切の躊躇なく殺りに行く。」



『……』



「２人みたいに昔から呪いに触れてきた
訳じゃない。
普通の高校生活を送っていた男の子がだ。

才能があってもこの嫌悪と恐怖に打ち勝てず、
挫折した呪術師を２人も見たことあるでしょ。」


『……それで今回は野薔薇を？』


「そゆこと。
彼女のイカレっぷり確かめたいのさ。」




黙って話を聞いていた伏黒が口を開く。




「でも釘崎は経験者ですよね。
今更なんじゃないですか？」


「呪いは人の心から生まれる。
人口に比例して呪いも多く強くなるでしょ。」


『地方、と……東京のレベルの違いを知って貰う
……ってこと、かな。ｹﾎｯ、』



「そう。……でもレベルと言っても、
単純な呪力の総量の話だけじゃない。

「狡猾さ」。
知恵をつけた獣は時に残酷な天秤を突きつけてくる。
命の重さをかけた、天秤をね。」




五条が軽く指でAに屈めと指示をする。
Aは大人しく前屈みになった。




そして屈んだAの喉元に
五条が指で五芒星を描く。




「……よし。相変わらず、しぶとくてしつこいね。
もう喉は大丈夫そう？」


『ｺﾎ､あ、り……がと……』





Aは苦笑いを零して喉を撫ぜた。

三十本→←二十八本

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す