１０月・続続々 ページ32
北信介side
治に米を送って来た帰りに
車の窓から自分の田圃を眺める。
広い田圃には稲株が所狭しと並んで
無事収穫できて良かったとしみじみ思った。
道路の脇は小さな斜面になってるから
田圃と道路は高低差がある。
それでその斜面の下にAの祠がある。
俺と、Aが初めて会うた場所。
ひょいと車窓から顔を覗かせれば
半透明の小さな背中が見えた。
「、」
A、と呼ぼうとして止まる。
Aの背中が異様に小さく、寂しく見えたから。
"消えてしまう"。
直感だった。
そう思ってしまった。
声が出ない。
喉が張り付いた様になる。
「ｯ……、」
いやや、消えんといて欲しい。
今年、雨やらの被害はあったけど平均は収穫できた。
感謝の祭りも終わってしまった。
約束も、果たしてしまった。
「Aｯ…………！！」
自分でも驚くほど掠れていて情けない声が出た。
『信ちゃん？』
不思議そうな声が下から聞こえてきて
Aの黒髪が坂の下から覗いた。
『あっ！やっぱり信ちゃんやった！
な、な！今うちの名前呼んだやろ？』
「A……！！」
Aの顔を見て
全身の力が抜けるくらいホッとした。
『！？
ど、どないしたん！？何で泣いとるん！？』
Aの小さな手が窓から入ってきて
そっと俺の頬に触れた。
Aの手は冷え始めたこの頃と同じ様に
ひんやりとして冷たかった。
お陰で逆に冷静になれた。
『ど、どこかぶつけた！？痛い！？
ば、ばあちゃん呼ぼか？』
「大丈夫や……何もない、何もないよ……」
『でもｯ……』
「ほんまに……大丈夫やから……ごめんな、」
精一杯、背伸びしとるんやろか。
ひょこひょこと見え隠れするAの顔に
思わず笑みがこぼれる。
『ならええけど…………
ほんまに辛いんやったら言うてな。
ちゃんと聞いたるから、』
「ありがとうな。」
いつから、こんな風に思うようになったんやろ。
いつから、こんな大切な存在になったんやろか。
Aは神様で、俺は人間や。
分かっとる。
ちゃんと分かっとるんや。でも、
.
.
「…………好きやで、A。」
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沙羅(プロフ) - トロピカーナブランケットツッパーナムルさん» めコメントありがとうございます！！そう言って頂けて本当に嬉しいです！！読んで頂きありがとうございました！！！ (2021年7月4日 0時) (
レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
トロピカーナブランケットツッパーナムル - いやこの作新ガチ好き (2021年7月3日 17時) (レス) id: 99e5f8b903 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - でこりんまんさん» コメントありがとうございます！来て貰えて本当に嬉しいです…！！切ない、でも幸せなお話が書きたかったのでそう言って貰えて私も感涙です……！！！読んで頂きありがとうございました！！ (2020年10月26日 12時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
でこりんまん(プロフ) - 幼なじみは個性的から飛んできました……！凄く素敵なお話でうるうるしながらよませていただきました……！！ (2020年10月26日 8時) (レス) id: 5f3c679f42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：沙羅
| 作成日時：2020年10月25日 19時
