双子じゃなくて兄弟【文豪ストレイドッグス】

１４話 ページ16

貴方side



今頃は深月ちゃんと安吾がケェキを

頬張っている頃かな。



なんて、考えながら

治に借りた鍵で部屋に入る。



片手には買い物袋。なかなか重い。



貴方『うわぁ……予想通り』



床に転がる空き缶、空き瓶、服。

敷きっぱなしの布団。雑誌。



貴方『片付け方は教えた筈なのだけど……』



思わず溜息がこぼれる。



貴方『甘やかし過ぎたかなぁ…』



親が居らず、収入のあてもない頃

私が治の親にならないと、と思ってきた。




母親のように甘やかし、時に厳しく。

父親のように働き、時に子と遊ぶ。




そんな世間の親が見本で

一生懸命に働いて治と過してきた。




貴方『……苦労をかけたねぇ』




ゴミを拾い集め袋に放り込みながら呟く。




貴方『…でも、掃除は教えないとね』




私は一つ頷いて袋を縛る。

それから買い物袋を掴んで台所を借りた。




貴方『冷蔵庫は空っぽ。買ってきて良かったよ…』




野菜を手に取り包丁で切る。

絶対不健康な生活してるだろうから……

今日くらいは健康的な食事を取らせないと。




貴方『それにしても…治ってば遅いなぁ……』




行人君の所に寄って

さらに買い物までして来たのに…




そんなことを考えながら

野菜スープを作るべく鍋を用意する。




貴方『わあー新品同様の綺麗さー』




料理してないね？？

否、させたくないのも本音だけど。




グツグツと音を立てて野菜が煮える。

そこにコンソメやら何やらを入れてもう一煮立ち。




その間に治の好きな蟹を使って

サラダとグラタンを作る。




貴方『オーブンはこれかなあ』

えい、と具を入れた耐熱皿を投入。




善い匂いが部屋に充満する。

そしてやっと、この部屋の主が帰ってきた。




太宰「兄さんただいま！えっ凄い善い匂い！！
もしかして蟹かい！？そうだよね！？」

貴方『そうだよ。さ、手を洗っておいで』

太宰「うん！！」




バタバタと走っていく治。

嗚呼、懐かしいな。




何時の間に脱いだのか

砂色の外套を壁にかけた治が隣に立つ。




太宰「私も手伝うよ！」

貴方『おや本当かい？ならお茶を淹れてくれ給え』

太宰「判った！」




覚束無い手つきで急須に入れた茶を注ぐ治。

……普段は如何していたのやら。




太宰「淹れたよ！」

貴方『有難う。じゃあ運ぼうか』

太宰「あ、兄さんは座っててよ！」

貴方『えー？』




治に背中を押され仕方なく席に座る。

……頼もしくなったね。

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