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ひゃくじゅうさん ページ22

貴女side



安吾くんの部屋は

清潔なワンベットルームスイートだった。


生活家具はほとんどなく、

小さな本棚に幾つか本が入っているだけ。


天井には巧みに隠された通気孔があって

換気扇が静かに回っていた。


ただ、部屋の隅にある黒い丸椅子が気になった。




貴女『安吾くんらしい部屋……』

織田「坂口安吾、マフィアの諜報員」



作くんが安吾くんの情報を声に出していく。



織田「インテリでミステリアスな男。
誰も君の正体を知らない」



作くんは窓に向かって行き外を見た。



それから部屋に振り向くと

何か気付いた様な顔をした。



貴女『……黒い木製の丸椅子、じゃない?』

織田「……嗚呼」



どうやら考えていた事は一緒だったらしい。

作くんは椅子に近付くと観察を始めた。

私も隣に立って椅子を見た。



貴女『……』



椅子の表面が少しだけ汚れている。

まるで足跡……



それから私はゆっくり天井を見た。

私みたいに背が低いと椅子は踏み台も同様だから

この椅子にも何かヒントがあるかもと思ったのだ。



織田「…通気孔」



作くんは小さく呟くと

丸椅子を持って通気孔の下に行く。



その椅子に足をかけると

通気孔に付けられた樹脂の網に手を伸ばす。



貴女『何かあった?』

織田「ッ…小さな…硬い…箱、か?」



作くんが腕を通気孔から出すと同時に

小さな白い金庫が出てきた。


それを振るとガラガラと音がする。

……音からして金属製の小型の物?



貴女『…!』





目の端に何か光るものを捉えた。

窓の外、高層楼閣、屋上、人影。





作くんは異能で、私は視力でそれを知り

ほぼ同時に床へ身を伏せた。




硝子が割れる破砕音が響き

作くんの正面の壁に黒い孔が現れた。

すぐに二つに増える。




作くんは床を転がるように移動し

脇の拳銃囊(ホルスター)から銃を取り出し構えた。


私は窓際の壁に背をつけ

目の端で僅かに外を見れる距離にしゃがむ。




貴女『……手練の狙撃手』

狙撃手は即座に荷物をまとめ姿を消した。




……私が見たのは日光が銃に反射したものか。

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作者名:沙羅 | 作成日時:2019年5月13日 15時

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