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ひゃくきゅう ページ17

貴女side


鷗外「流石に冷静だね。ここで狼狽えるようなら
捜索係には不向きかとも思ったが……
佳いだろう、説明を続けるよ」



リンタロウ医師の話だと

安吾くんは昨夜から行方不明になったらしい。



昨日は一緒にLupinで飲んだし…

それに疲れてたから直ぐ自宅に帰ったはず。



恐らくあれは嘘では無い。




鷗外「──────私の気持が判るだろう?」




要するに安吾くんはマフィアの諜報員だから

優秀な部下を助けたい、らしい。




織田「勿論です」

貴女『そうですねぇ』




肯定か否定か曖昧な返事をする。

首領の考えはよく判らない。昔から。



鷗外「織田君、君のような人間は大変貴重だ。
期待しているよ。
勿論、A君にもね」



くるくる回していた羽根ペンで

何やら銀色の紙に書き込んでいるリンタロウ医師。




織田作之助

右の者 泰然自若なる所作にて
紛々たる万事、破竹の如くせしむる也
容喙なく即ち扶くる可

鷗外




鷗外「これを見せれば、組織内では
何かと便宜が図られるだろう。持っていくといい」



作くんがその紙を受け取る。



リンタロウ医師が治くんに頼れば?的な

ことを作くんに云うが作くんは断る。



鷗外「善き便りを期待しているよ」



リンタロウ医師が羽根ペンをスタンドに戻す。

それを合図に作くんは一礼をして扉に向かう。

私も疑問を抱えつつも礼をして背を向けた。




鷗外「織田君」

作くんが部屋を出ようとした瞬間だった。



鷗外「君が肩から提げている自動拳銃。善い型だね」

織田「使い慣れているだけの骨董品です。
しかし、光栄です」



鷗外「些細な好奇心から訊くのだけど
君はその銃で人を殺 した事が一度もない、
と云う噂だが」

織田「事実です」

鷗外「何故かね?」



作くんは数秒おいてから答えた。



織田「その質問は、組織の長としての命令ですか」

鷗外「いいや。私個人が発した、単純な興味だよ」

織田「では答えたくありません」



…まあ、そうだろう。

作くんの過去は聞いた事がある。


リンタロウ医師はきょとんと目を丸くして

それから微笑した。



鷗外「そうかね。では行き給え。
善い報告を期待しているよ。
──────嗚呼、A君は残り給え」

貴女『!』



何で、と云おうとして止まる。

あの目は……何か考えがある。



私は作くんにまた後で、と伝えて

再びリンタロウ医師の前に立った。

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作者名:沙羅 | 作成日時:2019年5月13日 15時

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