いろは唄を吟ず【文豪ストレイドッグス】 (ページ6)

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ほページ6

no side

貴方『おっと……連絡をしないとですね』

山積みにした男達の前で

袂から携帯電話を取り出す室生。

貴方『もしもし、室生ですが…』

尾崎«おお、A殿かえ？»

貴方『"殿"なんて止して下さいよ紅葉さん』

苦笑いで室生は電話の主…尾崎紅葉と話す。

尾崎«A殿の方が歳上じゃからのぅ»

貴方『立場は紅葉さんの方が上ですよ』

尾崎«まぁ気にするな»

ほほほ、と電話越しでも

艶めかしい笑い声が聞こえる。

貴方『ところで…例の小競り合いの件なのですが』

尾崎«A殿の事じゃ。もう終わったのだろう？»

貴方『えぇまあ…金の在処は聞き出しましたので
また位置情報を送らせて頂きますね』

尾崎«ご苦労じゃった。気を付けて帰られよ»

貴方『有難う御座います』

では、と室生は電話を切る。

同じ携帯で位置情報をマフィアの情報部へと送る。

しばらくすると返信があり

黒服が向かったとの旨だった。

貴方『さて、豆腐を買いに行きましょうかね』

山積みの男達には目もくれず

室生は薄暗い路地裏を後にした。

──────

室生は街中を歩いて行く。

時折、室生の容姿に目を奪われる者が数人いるが

そんなことはお構い無しに室生は歩く。

不意に横道から

黒いパーカーを着た人物が姿を現す。

？？「──────」

貴方『……』

そのまま室生の横をすれ違う。

すれ違いざまに何かを呟いて。

室生はピクリとも表情を変えず

ただ淡々と歩き続けた。

やがてパーカーの人物が見えなくなったところで

室生は立ち止まり空を見上げた。

貴方『……物騒な事件ですね』

室生はパチンと指を鳴らすと

右の掌を握り、そして開いた。

貴方『異能力…【杏(あんず)っ子】』

淡い黄色の光が舞う。

そしてそこから小さな女童が飛び出した。

貴方『"お嬢様の命を守りなさい"』

杏子「はいあるじさま」

女童はコクリと頷いて海の方へと飛んでいく。

それを見届けた室生は再び街を歩き出した。

.

今夜、泉鏡花が

室生の用意した豆腐を食べることは無かった。