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十歩 ページ11

no side


振り下ろされた前足。

太宰はそれを跳躍してかわす。


靴が地面と擦れて音を立てながら滑り、

そして壁にぶつかった。


太宰「おっと」


虎が太宰の正面に立つ。

その瞬間、太宰の表情は一変する。


軽く地面を蹴った虎が

一直線に太宰へと飛び込む。



太宰「獣に喰い殺 される最期というのも
中々悪くはないが」



呟きながら左手を伸ばす。



太宰「君では私を殺せない」



太宰の指先が虎の額に触れた瞬間

蒼い光が虎を包み込む。



太宰「私の能力は────
あらゆる他の能力を触れただけで無効化する」



虎が中島へと戻っていく。

意識の無い中島はゆっくり太宰へと倒れ込む。



太宰「………」


数秒後、太宰はぱっと手を離す。


太宰「男と抱き合う趣味はない」

ビタン、と音を立て中島を床へと落とした。



独歩「Aさん!太宰!」

太宰「ああ、遅かったね。虎は捕まえたよ」

貴女『ふふ…』



駆け足で倉庫内に入ってくる国木田。

独歩「その小僧…じゃあそいつが」


貴女『ええ。虎の能力者よ』

太宰「変身してる間の記憶がなかったんだね」


独歩「全く────次から事前に説明しろ。
肝が冷えたぞ」

そう云いながら国木田はメモ紙を見せる。



──十五番街の西倉庫に虎が出る──
──逃げられぬよう周囲を固めろ──



独歩「おかげで非番の奴らまで駆り出す始末だ。
皆に酒でも奢れ」

そして倉庫の入口に3つの人影。



晶子「なンだ、怪我人はなしかい?つまんないねェ」

与謝野晶子────
能力名『君死給易』



乱歩「はっはっは!
中々できるようになったじゃないか太宰。
まあ僕には及ばないけどね!」

江戸川乱歩────
能力名『超推理』



賢治「でもそのヒトどうするんです?
自覚はなかったわけでしょ?」

宮沢賢治────
能力名『雨ニモマケズ』



独歩「どうする太宰?
一応 区の災害指定猛獣だぞ」

国木田独歩────
能力名『独歩吟客』



貴女『まぁ……治の予想は出来てるわ』

武者小路A────
能力名『愛と死』



太宰「うふふ 実はもう決めてある」

太宰治────
能力名『人間失格』



太宰「うちの社員にする」

笑顔で云った太宰に国木田の怒号が飛んだ。





これが先触れ前兆し────


中島敦────
能力名『月下獣』

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作者名:沙羅 | 作成日時:2019年2月15日 22時

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