第六話 ページ8
＿日が高い。
胸元に仕舞っていた手紙を取り出し、広げる。
今朝とは違い、意識ははっきりとしていた。
｢目、覚めたん？｣
｢…！｣
｢ふふ、そんな驚かんといたって。別に取って食わへんから｣
紅い着物の女性…美智子は、高い布団の傍に腰掛け湯呑みを差し出す。
茶の良い香りが鼻腔をくすぐり、張り詰めていた緊張がほぐれていく。
｢…いただきます｣
＿少し経って、やっと自分の置かれた状況が理解できつつあった。
｢あの…えっと｣
｢美智子でええよ、どうしたんや？｣
言葉を詰まらせたAを見て察したのか、美智子はそう言って微笑みかける。
｢私…手紙に招待されて…｣
持っていた手紙を見せると美智子は頷き、別の紙を取り出した。
｢そっちはもう要らんよ。大事な事はこっちに書いであるはずやで｣
渡された紙を受け取ると、美智子は席を立った。
Aは慌てて顔を上げる。
｢…あんた、名前は？｣
意図の掴めない問いに首を傾げる。
｢え？｣
｢名前。いつまでも巫女さんいうて呼ぶ訳にはいかんやろ｣
…成程、そういう事か。
｢A、です｣
これまでの人生において、名前を名乗る事など数えるくらいしか経験した事が無い。
巫女という肩書きさえあればそれで事足りたからだ。
噛み締めるように、大切に、名前を口にする。
美智子はその様子に温かい笑みを浮かべ、Aの頭をそっと撫でた。
｢これから長い付き合いになるで。…宜しゅうな、A｣
｢…はいっ｣
こんなに心を込めて呼んでもらった事は生まれて初めてかもしれない。
お母さんのくれた大切な名前。
これからは大切にしよう。
｢…それと、その紙はハンターには見せたらあかんで。大切にしよし｣
そう言い残し、美智子は扉の外に消えた。
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ゆう - おジョゼかっこいい！ (2021年3月21日 21時) (
レス) id: fdf829f708 (このIDを非表示/違反報告)
シマエナガ(プロフ) - 要さん» そうだったんですね...汗 素敵なお話なので是非残してください！ (2019年2月16日 22時) (レス) id: 56182cb6ed (このIDを非表示/違反報告)
要(プロフ) - シマエナガさん» ありがとうございます！そうなんです、書いた後にそれを知って泣 消すのも勿体なかったのでそのままでいかせて貰いました、、、！ (2019年2月16日 2時) (レス) id: 85394da7f9 (このIDを非表示/違反報告)
シマエナガ(プロフ) - いつも陰ながら応援しています...！ジョセフさんかっこよくて素敵です泣 これからも楽しみにしてます！ それと余談ですが、バレンタインに女性からチョコを渡すと言うのは日本だけらしいです...(でも可愛いお話で好きです...！) (2019年2月15日 23時) (レス) id: 56182cb6ed (このIDを非表示/違反報告)
要(プロフ) - ナ子さん» ありがとうございます〜！そう言って頂けると嬉しいです！頑張ります〜！ (2019年2月14日 7時) (レス) id: 85394da7f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：要 | 作成日時：2019年2月11日 4時
