第十話 ページ12
突然頭上から降ってきた声に肩を揺らす。
咄嗟に頷くと、声の主は隣に深く腰掛ける。
「ジョゼフさん!」
「やあエマ、パンを取ってくれるかな」
「どうぞなの」
そんなやり取りを聞きながら、部屋で聞いた情報と目の前の人物を照らし合わせる。
まずエマが呼んだ事から、目の前の男の名前はジョゼフということが確定した。
_同名?
しかしこの席に座るのを止めなかったという事は、’私がお礼を言いたいジョゼフさん’と目の前の男は同一人物という事だろう。
「…君が新しいサバイバー?」
お礼を言うべきか、否か。
まだ一致していない情報がひとつだけある。
「おじいさんじゃない…!」
自分が思ったよりも大きな声が出ていたらしい。
全員が一斉にこちらを見る。
「…あ」
時すでに遅し。
マーサを初めとした殆どの人々は笑いを堪え、エマはきょとんとしている。
そして当のおじいさん…もといジョゼフは怪訝そうに眉を顰めていた。
「…随分な言い草だね」
途端にあちこちで笑いが起きる。
「ジョゼフ、お前も遂に弄られる日が来たか!」
「やるなあ、A」
「あっはっは、Aもっと言えー!」
マーサはお酒が入っているのかケタケタと笑いながら膝を叩いている。
「ちょ、マ、マーサが言ったんでしょう…!」
慌てて抗議すると、彼女は手を高く挙げながらそうでーす、と悪びれる様子も無く言った。
「マーサ…また君か」
ジョゼフは溜め息を吐き、斜め前に座る彼女を軽く睨む。
そんな彼の服の裾を引っ張り、小さく声をかけた。
「あ、あの」
「…何だい」
明らかに不機嫌なその声に一瞬怯むも、堪えて頭を下げる。
「ごめんなさい、私…まさかこんなに綺麗な人とは知らなくて…」
おじいさんだと思っていた事も、こんなに綺麗な人に重労働を強いた事も申し訳無かった。
素直に謝ると、許してくれたのか頭にぽんぽんと手を乗せられた。
「マーサの入れ知恵なら仕方が無いね。…午後のゲームに出るなら今回のことは水に流そう」
にこりと微笑むジョゼフに、元気よく頷き返す。
「わかりました!」
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ゆう - おジョゼかっこいい! (2021年3月21日 21時) (レス) id: fdf829f708 (このIDを非表示/違反報告)
シマエナガ(プロフ) - 要さん» そうだったんですね...汗 素敵なお話なので是非残してください! (2019年2月16日 22時) (レス) id: 56182cb6ed (このIDを非表示/違反報告)
要(プロフ) - シマエナガさん» ありがとうございます!そうなんです、書いた後にそれを知って泣 消すのも勿体なかったのでそのままでいかせて貰いました、、、! (2019年2月16日 2時) (レス) id: 85394da7f9 (このIDを非表示/違反報告)
シマエナガ(プロフ) - いつも陰ながら応援しています...!ジョセフさんかっこよくて素敵です泣 これからも楽しみにしてます! それと余談ですが、バレンタインに女性からチョコを渡すと言うのは日本だけらしいです...(でも可愛いお話で好きです...!) (2019年2月15日 23時) (レス) id: 56182cb6ed (このIDを非表示/違反報告)
要(プロフ) - ナ子さん» ありがとうございます〜!そう言って頂けると嬉しいです!頑張ります〜! (2019年2月14日 7時) (レス) id: 85394da7f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:要 | 作成日時:2019年2月11日 4時